〔田舎者〕

●今、『仮名草子集成』第57巻の校正をしている。『醒睡笑』の
「躻」の2話目、藤五郎と専十郎の話が出てくる。都人と田舎人の
習慣の違いを利用した話である。
●私は、高校を卒業して、山梨から東京へ出た。まず、第一に痛感
したことは、東京の人は、時間を大切にしている、ということであった。
『醒睡笑』の頃は、京都であったが、明治維新後は、東京となる。
●学生時代に、私は、学生運動には殆ど参加せず、同志にカンパをして、
図書館に通っていた。ただ、1回だけ、安保闘争の時、国会へのデモに
参加した。樺美智子さんが亡くなった日である。その夏休みに田舎へ帰って、
驚いた。「秋男さんは共産主義者」になっていたのである。「田舎」とは、
その程度の文化レベルの「場」である。以後、私は「田舎」の基準を捨てて、
日本の中心である「東京」を基準にして研究を続けてきた。
●故郷に錦を飾る、これでは、小さすぎる。「○○県一」では、日本一には
なれない。田舎では、研究書の2、3冊も出せば、大先生と言われるだろう。
東京では、本の5冊や10冊出しても、全く問題にされない。私が、地方の大学
へ行かなかったのも、このためでもあった。
●我が県出身の○○大臣が○○国の大統領と、我が郷里で会談をした。
私の発案で生まれ故郷に桜の公園がつくられた。今年、その公園に看板が
立てられた、と写真を送ってくる御仁。これらは「田舎者」の部類に
入るだろう、そんな風に私は思っている。多謝。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。