東京の地名は江戸切絵図から

●私は、大学へ入るために東京へ出て、4年間を過ごしたが、生活圏と言えば、下宿、大学、図書館、などを往復する位で、狭かった。
●大学を卒業して、進路のこともあり、日本橋の桃源社という出版社の編集部にお世話になった。ここで、大衆文学という、全く未知の分野に出会ったのである。私は、高校時代から、日本文学、世界文学は読んでいたが、大衆文学に関しては、殆ど知らなかった。
●桃源社の編集部で読まされたのは、源氏鶏太・山手樹一郎・村上元三……などという大先生の作品で、文学に、このような世界があることを教えられた。大衆のために、挿絵を入れて、わかりやすく楽しい時間を過ごしてもらう作品。しかし、私は、これらの大衆小説や、推理小説をバカにはしなかった。真剣に原稿整理・校正・校閲に取り組み、疑問点は、先生に確認して、1字たりともミスの無い本を読者に提供したいと、努力した。
●山手樹一郎の作品は、江戸時代の江戸が舞台で、江戸の地名が出てくる。編集部では、江戸の切絵図を複製して、それで、原稿をチェックした。私は、東京の地名、町名、橋の名、などは、切絵図から学んだ、と言ってもよい。
◎『天の火柱』桃源社 1962 のち春陽文庫、桃園文庫
◎『お助け河岸』桃源社 1964 のち春陽文庫、双葉文庫
◎『青雲燃える』桃源社 1966 のち春陽文庫、富士見書房時代小説文庫
●山手樹一郎先生のお宅には何回も原稿を貰いに行った。多くのお弟子さんがいて、ジョニクロには、群がって飲んでいたことが懐かしく思い出される。楽しいエディター時代だった。

■江戸切絵図
山手作品には、筋違御門、八辻ケ原、新シ橋 などよく出てくる

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。