研究の伝統

●湯浅佳子氏の大著『近世小説の研究――啓蒙的文芸の展開――』が発行された。先日の、『仮名草子集成』第57巻に続いて、仮名草子研究に関する著書の刊行で、大変嬉しい。
●650余頁という、湯浅氏の大著を目の前にして、この研究の源泉に思いを寄せた。湯浅氏は、この著書の「あとがき」の中で、次のように述べておられる。
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東京学芸大学在学中には、故小池正胤先生の近世文学ゼミに加わり。先生のご指導のもとで丼原西鶴の浮世草子について卒業論文を書いた。思えばそれが筆者の研究の出発点であった。学部卒業後もなお小池先生主催の叢の会にお
うかがいする機会をいただいた。
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二松学舎大学大学院では、青山忠一先生のご指導の下で仮名草子研究に取り組んだ。青山先生の御授業では名調子の雑談が面白く、それをお聴きしているだけで瞬く間に時が過ぎていったものであるが、しかしそうしたとりとめもな
いお話の中に、仮名草子や西鶴浮世草子をどう読むかという文学研究の本質的な問題や、研究者としてあるべき心構えといった、院生にとって大切なメッセージが込められていたのであった。この青山先生の、仏教学から読む近世前期草子論が、やがて筆者の研究の拠り所となった。……
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●湯浅氏が、小池正胤先生と青山忠一先生の御指導を受けられたことを、今、私は知った。この大著の目次を一覧して、全て了解できたように思う。
●東京学芸大学の、小池正胤先生を中心とする【叢の会】の地道な活躍、大きな研究業績には、多くの学恩を賜り、感謝していた。また、青山忠一先生には、野田寿雄先生が主宰された、第一次仮名草子研究会で、たくさんの御指導を賜った。特に仏教思想と仮名草子との関係では、腹蔵なく、貴重なお教えを賜った。
●湯浅氏は、この偉大な先学の御指導を頂いて、卒論を書き、その後の研究会でも研鑽を積まれ、大学院では、青山先生の下で、仮名草子を研究された由である。湯浅氏の論文は、これまでも、ある程度は読んでいて、多くの事を教えられてきた。今回、この労作・大著によって、さらに受ける学恩は大きい。大著の刊行を祝し、感謝申上げる。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。