〔井関隆子、いせき・たかこ〕 もういいでしょう

●昭和女子大学の講義・講読〔近世女流日記文学〕の、昭和60年度の最終授業の時間に、〔井関隆子 いせき たかこ〕と板書した。
●皆さんは、昨年の、4月の最初の時間に、〔井関隆子〕という名前を目にし、耳にしても、この女性のことを何も知らなかったでしょう。しかし、それから、1年間、この教室に出る度に、イセキタカコ、イセキタカコ、と私の口から出て、井関隆子、井関隆子、と板書されて、もう、この女性の名前を忘れないでしょう。
●それが、私の目的です。皆さんは、卒業して、会社に勤めても、ふっと、学生時代を思い出したら、この女性の事を思い出して下さい。それが、私の願いです。
●30年前のことである。それから、私は、毎年、毎年、学生に語りかけ、論文を書き、本を出し、講演をして、この無名の女性の宣伝につとめてきた。今、ふと思うに、もう、この井関隆子という、幕末に生を享けた女性は、日本の歴史の中から消えることはないだろう、そう言える。私の名前は、すぐ消えても、〔井関隆子〕の名は消えないだろう。それが、文学の力である。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。