『百八町記』の研究史

●私は、如儡子研究を卒論に選んで、ここまで追究してきた。この『百八町記』は、初期の頃から読んでいたが、内容が単純なようでありながら、実は、仏教思想の処理がとても難しい。ついつい、後回しになり、最後に残ってしまったのである。

●この作品の諸本調査は、昨年、『近世初期文芸』第33号に報告した。個人的な事情で、思うように調査できなかったけれど、まず、実状は解明できたと思う。東京大学図書館蔵無刊記本に関しての疑問を残すが、諸本は、次の如く分類できる。

1、 無刊記本
2、 寛文4年5月、中野道伴版
3、 刊年未詳、中川茂兵衛・中川弥兵衛版
4、 寛文4年、銭屋三良兵衛版(儒仏二教水波問答)

●近代に入ってからの、この作品の研究をひとわたり見ると、余り進んでいなかった。何しろ、文学としては魅力に乏しい作品である。

① 潁原退蔵氏「仮名草子の三教一致的思想について」
昭和12年11月30日
② 鈴木 亨氏「『百八町記』の考察」
昭和46年1月
③ 野間光辰氏「如儡子系伝攷」
昭和53年12月
④ 千葉真也氏「『百八町記』の典拠について」
昭和57年3月
⑤ 青山忠一氏「百八町記」
平成11年2月28日

●潁原退蔵氏以下、いずれも力作・労作であるが、中でも、千葉真也氏の典拠の解明は画期的で、この論文によって、如儡子の著述の背景が解明された。次に、青山忠一氏の労作は、ただただ、敬服するのみである。青山氏は、紙数に気兼ねする事無く、100頁の大論文を執筆しておられる。逐条的に、この作品に真正面から向き合って、分析・解説・批評・評価しておられる。
●私は、野田寿雄先生の、第一期・仮名草子研究会に参加させて頂き、この会で、青山忠一先生から多くの御指導を賜った。特に仏教的な諸問題に関しての、お説は、今も有り難く感謝している。

 

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。