卒論に『しのびね』

卒論に『しのびね』
2017.12.05 Tuesday

<授業風景> 昭和女子大学 日本文学科

街では早くもクリスマスソングを鳴らす店もあり、大学のキャンパスでも恒例のクリスマスツリーの準備が数日前から進められ、空高く聳える木の天辺には大きな星が飾られて、十二月の点灯を待っている。
今年もあとわずか、と思うこの頃であるが、「今年もあとわずか」は四年のゼミ生の前では禁句である。「今年もあとわずか」と言って発破をかける方法もあるが、それぞれのスケジュールに沿って日々卒論の原稿作成に真剣に取り組んでいる学生の姿を見ると、発破をかけて激励するよりも、冷静さと熱意をもって作業が順調に進められるよう、祈るような思いで静かに見守るしかないように思われる。
今年のゼミ生が卒論で対象とする作品は、『徒然草』や『十六夜日記』など、高校生にも作品名が知られているポピュラーなものもあるが、中世王朝物語の『恋路ゆかしき大将』や『しのびね』、お伽草子の『一本菊』など、作品論の先行研究があまりない作品も多く、そうした開拓途上の作品に果敢にチャレンジする学生が多いという特色がある。
論文の構成、提出までの作業予定日程は、全員すでに決まっているので、残された日にちに対してたかを括ったり、当てずっぽうな計画で油断するようなことはないであろう。同じ日数の量でも真剣に取り組む者には、時間の質も異なってくる。
学生生活最後の秋の暮れ、日を惜しむかのように卒論作成に没頭するゼミ生にとっては、実際に「今年もあとわずか」ではないのである。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

●昭和女子大学の日本文学科の学生の卒論のテーマには、『しのびね』もあるという。私は、この12月に発行される『近世初期文芸』第34号に「井関隆子校注『しのびね』(静嘉堂文庫蔵)考」を執筆した。この作品は、昭和女子大の大倉先生も研究されている。そのような関係かも知れない。そのうちに、『しのびね』研究の中に、井関隆子の名が出るようになるかも知れない。学問の世界は、実に楽しい。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。