『桜斎随筆』の資料的価値

『桜斎随筆』の資料的価値
2018.02.03 Saturday

『桜斎随筆』の 引用書目、引用新聞・雑誌

 則孝は「はしがき」で「……いにし世の文、今の世の新聞誌などより、世に珍しく思ふは、こと/゛\に書記したり……」と述べている。則孝が利用した「いにし世の文」を、目に付くままに、その一部を列挙すると次の如くである。( )の中の数字は巻数。

衣手集・麻薬集・和漢朗詠集・枕草紙・源氏物語・栄花物語・江戸名所図会・江戸砂子・武蔵野集・晩進漫録・玉滴隠見・一話一言・西遊記・東遊記(1上)・日本書紀・玄同放言・大日本人名辞書(1下)・井関隆子日記・三代実録・古今集・新古今集(2上)・文正双紙・元禄間記・常陸誌料・李花集・桜史新編・神代余波(3)・岩瀬百樹〔山東京山〕筆記・武江年表(4)・続撰清正記・武徳安民記・武徳編年集成・兵家茶話・泰平年表・日本外史・大名武鑑・野史・書画譜(5上)・枕草紙春曙抄・老談一言記・譚海・鹿島海道記・鹿島神社考・常陸帯・天保水滸伝・鳩巣小説・徳川世記(5下)・松かげ日記・月のゆくえ・池のもくず・柱下余談・雨窓間話・江戸名所花暦・近世名家書画談・江戸遊覧花暦・本居大平叟文集・嘉多比沙志(6上)・大成武鑑・本朝武林鑑・元禄珍話(6下)・新蘆面命・室町殿伊勢参宮記・故実拾要・塩尻(7)・雨窓紀聞・日本通史・神童憑談略記(9)・殿居嚢・頃比文耕録(11上)・松蘿集古・徳川記・恐惶新諭(11下)・江戸真砂子・江戸塵拾(12)・伊勢参宮名所図絵・北窓瑣談・文明東漸史外篇(13)・菅笠日記・伊勢国司紀略・神異記(16)・万葉集・夫木葉・堀川百首・呉竹集・新後撰集・方与集・名所今歌集・散木集・拾遺愚草・万代集・新勅撰集・有房集・ひとり寝(32)・三輪物語・南遊紀行・続諸州めぐり・餌袋日記(35)・安政紀事・王政復古戊辰始末・灯下雑記(36)・慶応四年戊辰家日記(37)・西京雑記・世説新語・慶長見聞集(38)・近世百物語・兎園小説拾遺・神代のなごり・よしなし草・参詣物語(39)・南畝莠言・先哲像伝・兎園小説・史徴墨実考証(40)・安政見聞誌・安政見聞録・塵塚物語・西山遺事・墨水消夏録(41)・鹿嶋大宮司則興筆記・桜画三十六品帖・桜華薮・尊号美談・退私録・耳嚢(42)・後奈良院綸旨・慶光院由来書・幕府祚胤伝(45)・手前味噌(47)・牡丹名称之記(48)・武蔵野紀行・紳書・義挙記・徳川氏御実紀附録・徳川公略譜(50)・梅翁随筆・長崎夜話・竹林拾葉続輯・勝柏事跡開城始末(51)……

また、則孝が引用した「今の世の新聞誌」を、これも目に付くままに列挙すると次の如くである。

報知新聞・東京絵入新聞・大阪朝日新聞・官報・いろは新聞・絵入朝野新聞・やまと新聞・伊勢新聞・西京日出新聞・会通雑誌・国会準備新報・作新日報・山田通信・時事新報・茨城日報・東洋学会雑誌・風俗画報・神苑会続報・江戸会誌・毎日新聞・歌舞伎新報・常陸誌料・東京日々新聞・有喜世新聞・芳譚雑誌・関知新聞・絵入新聞・中外物価新報・朝陽新報・明治日報・開花新聞・東京勉強新聞・東京今日新聞・大坂通信・輿論日報・統計集誌……

 以上、則孝が、この六十冊の随筆を記すにあたって引用した文献、新聞・雑誌を掲げてみたが、古記録では、文学作品から歴史的著述まで、かなり広い範囲に亙っている。これは則孝の興味の対象が、いかに広いものであったかを示している。また、これらの中には、『国書総目録』に未記載の文献もかなりあり、貴重な記録も少なくない。
 明治初期の新聞・雑誌も広範囲のものが利用されている。この期の新聞・雑誌は形態も内容も混乱していて、その発行紙・誌数は大変な数であるが、これらは、発行の月日も一定ではなく、伝存しないものも多いと推測される。歴史的事実の一端が則孝の記録で伝えられた、という可能性もある訳である。また、則孝は、これらの古記録や新聞・雑誌を引用する場合、その出典や発行月日を明確にしており、不明の場合は「今こゝに記す一条は何の書より写し置しか失忘せり」 (巻四十一の七、万機沿革)と記している。興味本位に記録しているのではなく、事実を伝えようとする配慮が見られる。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。