『可笑記』の読者

『可笑記』の読者
2018.04.28 Saturday

『可笑記』の読者     深沢秋男

はじめに

 『可笑記』の読者に関して、『文学研究』第二十六号(昭和42年12月)に書いた事かおる。そこでは、具体的な読者としで、『可笑記評判』の著者、浅井了意、『新可笑記』の作者、井原西鶴、『御前お伽婢子』の都の錦、『隔蓂記』の記者、鹿苑寺第二世・鳳林承章禅師、『徳川浪人伝』の作者、柴田錬三郎、『徳川夫人伝』の吉屋信子などを指摘した。

榎本弥左衛門

 若尾政希氏は「歴史と主体形成-書物・出版と近世日本の社会変容―」(「書物・出版と社会変容」第2号、2007年1月)で、近世初期の川越の豪商、榎本弥左衛門が、その記録『榎本弥左衛門覚書』の中で、『可笑記』を読んでいたことを指摘しておられる。この論文は、以下に示す如く大きな主題である。

はじめに

1、主体形成の一契機としての書物-問題提起-
 I、『可笑記』をよみ候て心おち付申候
 Ⅱ、書物の時代のはじまり
 Ⅲ、日本近世史研究の新動向

2、日本近世の社会変容と書物
 I、近世の政治常識の形成と書物
 Ⅱ、書物がっなぐ国家・社会である。

3、近世人の思想形成と歴史
 I、日々ニよみ候て、こうしやくはていしゆニ可承候
 Ⅱ、歴史の流れをどうとらえるのか―年表を読み、年表を作る―
 Ⅲ、軍書と歴史叙述
 Ⅳ、軍書と百姓一揆物語
むすびにかえて

 このような構想のもとにまとめられた論文であり、仮名草子研究の立場からしても、啓発される点が多い。ただ、ここでは、『可笑記』初版刊行の、寛永十九年から三年後の、正保二年に、川越の商人、榎本弥左衛門が二十一歳で、『可笑記』を読んでいる、ということに注目したい。

【以下省略】

(『近世初期文芸』第32号、平成27年12月発行)

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。