『仮名草子集成』第61巻発行

『仮名草子集成』第61巻発行
2019.03.14 Thursday

●『仮名草子集成』第61巻が発行された。

『仮名草子集成』第六十一巻
百戦奇法 明暦四年五月板、七巻七冊、絵入
百八町記 寛文四年五月板、五巻五冊
変化はなし(無刊記、板本、一冊)
花田富二夫・飯野朋美・安原眞琴 編
2019年3月10日発行
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●『仮名草子集成』は、朝倉治彦先生が始められ、途中、私も協力し、その後は、若い研究者に、その完結を託した。この地味ではあるが、学問的に意義のある出版が、世代を超えて継続している姿は、実に美しい。関係者に対して、心から感謝申し上げたい。

●さて、この巻には如儡子の『百八町記』が収録された。担当者は、飯野朋美氏である。この作品の本文は、昭和5年(1930)の「日本思想闘諍史料・5」に収録されていたが、90年ぶりに、信頼し得るテキストが私たちの前に提供されたことになる。学恩に対して感謝申し上げる。

●この『百八町記』の諸本に関して、飯野朋美氏は、次の如く述べられている。
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 深沢秋男氏は、「『百八町記』の諸本」(『近世初期文芸』三三、平成二十八年十二月)において、寛文四年の中野道伴奥付は「後から追加したものと思われる」とされる。しかし管見に入った諸本のうち最も早印と思われる本は、中野道伴奥付を有する広島大学中央図書館所蔵本であった。よって同本を底本とした。
 なお、諸本の詳細な解題は次巻に掲載する。ここでは底本についての簡単な解題のみを示す。
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●私は、如儡子の著作の諸本に関しては、全て調査していたが、この『百八町記』のみ、後回しになって、いざ、調査しようと思った矢先、家庭の事情で、各図書館へ出向いて調べることが出来なくなった。不本意ながら、各図書館の御配慮で、複写をしてもらい、現物ではなく、複写物に拠って調査分析した。その結果、無刊記本と中野道伴版の関係を次の如く判断した。
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1、無刊記本と中野道伴版

 寛文四年五月刊の、中野道伴版の刊記は、巻五の三十八丁に、
「寛文四甲辰五月吉日/中野道伴板行」
とある。この三十八丁の柱刻は、「百八 巻五 三十八終」とある。本文の最終丁の柱刻は、「百八町記巻五 丗七終」とある。刊記の丁の柱刻は、本文の柱刻と、書体も異なり、この丁は、後から追加したものと思われる。従って、無刊記本は、中野道伴版より前、寛文四年五月より前の出版と推測される。ただ、版木の欠損状態などを合わせて考えると、印刷の時期は、刊記の有無に関係なく、前後している可能性もある。
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●これに対して、飯野氏は、広島大学中央図書館所蔵の中野道伴版の方が刷りが早いと判断された。詳細は、第62巻に掲載されるという。私の判断は、現物を調査せず、複写物によったものである。やはり、諸本調査は、現物に拠らなければ、真実はわからない。私の提出した試案は、4年後に訂正されることになるのであろうか。研究は、このようにして進歩してゆく。飯野氏の次巻の詳細な解題が楽しみである。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。