言語的資料としての『可笑記』

言語的資料としての『可笑記』
2019.03.17 Sunday

柳の枝に雪折れはなし

レファレンス事例詳細(Detail of reference exampl

提供館
(Library) 埼玉県立久喜図書館 (2110009)
管理番号
(Control number) 埼久-1997-081
事例作成日
(Creation date) 1998/01/16 登録日時
(Registration date) 2007年03月24日 02時10分 更新日時
(Last update) 2008年06月13日 19時40分

質問

(Question) ことわざ「柳の枝に雪折れはなし」に、対句(反対の意味)となる「松の雪折れ」という言葉があるか。子どもの頃、親から聞いた言葉。

回答

(Answer) 『徳川文芸類聚 2』に「可笑記」が収録。「・・・柳の枝に雪おれはなし げにも松杉などのたぐひをみるに、おのが枝のつよきによつて、雪ふりつめばおされておるゝ事あり、是をなん雪をれの枝といふ、・・・」とある。これを紹介する。

回答プロセス

(Answering process) 『成語大辞苑』『成語林』『たとえことば辞典』『日本語使いさばき辞典』『動植物ことわざ辞典』等なし。ただし『成語大辞苑』には関連語として対語「堅い木は折れる」があり。
『日本国語大辞典』には「仮名草子・可笑記」に「柳の枝に雪をれはなし」とあり。
自館目録の『彩-BISC』を〈カショウキ〉から検索すると『徳川文芸類聚 2』に収録されていることがわかる。「・・・柳の枝に雪おれはなし げにも松杉などのたぐひをみるに、おのが枝のつよきによつて、雪ふりつめばおされておるゝ事あり、是をなん雪をれの枝といふ、・・・」とある。このことを言っていると推測される。
事前調査事項 「故事・俗信ことわざ大辞典」「中国故事成語辞典」「国語慣用句辞典」「世界ことわざ大事典」等になし。
NDC 語彙 (814 9版)

参考資料 『徳川文芸類聚 2 教訓小説』(国書刊行会 1987)

。。。。。。。。。。。。。。

『可笑記』巻1の23段

▲むかし、何とやらん云人のよめる哥也とて、人のずしけるを聞

中々によはきをゝのがちからにて 柳の枝に雪をれはなし

げにもげにも、松杉などのたぐひをみるに、をのがえだの、つよきによつて、雪ふりつめば、おされて、おるゝ事有。是をなん、雪おれの枝といふ。
真、其ごとく、歯といふものは、つよき物なる故に、力をいだし、かたき物をも、かみくだく。又、舌といふ物は、よはき物なるゆへに、やわらかにして、力を出す事もなし。さるほどに、人間四十にも、あまりぬれば、歯は朽うごき、かけおつれ共、舌は其人一期のうち、かけおち、ゆるぎくつる事なし。
又、火と云物は、そのせい、きびしく、つよきによつて、鉄石山岩をもやきくづし、灰とはなせども、薪をそへざれば、めつしやすく、又、水にあふ時はきえやすし。
又、水といふ物は、其せい、やはらかに、よはきによつて、かみーゑをもつて、へだつれどもへだてやすく、又、かみの毛一すぢをもつて、とをせども、さはる所なけれ共、千石万石つみたる大舟をも、かるがるとうかべ、又、波となる時は、大山をぬき、ばんじやくをもうちくだく。
さる間、心もあらん侍は、じひふかく、義理つよく、老たるをうやまひ、わかきをとりたて、同年にしたしく、欲あさく、いんぎんにしてなさけふかく、剛なる心を、おしかくし、しかも、底にはゆたんせず、うはベむつくりと、人あひよきこそ、真実の大剛強無類の武士なるべけれ。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

●これが『可笑記』巻1の23段の全文である。埼玉県立久喜図書館では、読者の質問に対して、ネット検索を駆使して、出典『可笑記』にたどり着いた。『日本国語大辞典』を見ても、出典に『可笑記』を示す例が少なくない。『可笑記』は、近世初期の言葉の資料としても利用価値があるようだ。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。