仮名草子 『可笑記』

仮名草子 『可笑記』

  • 2019.10.16 Wednesday
仮名草子 『可笑記』

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可笑記   かしょうき

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

可笑記(かしょうき)とは近世初期の随筆風仮名草子である。作者は斎藤親盛、筆名「如儡子(にょらいし)」。

目次
• 1概説
• 2原典の構成と成立期
• 3影響と価値
• 4脚注
• 5原典と参考書
• 6関連項目

概説

序文で作者は「この書は、浮世の波に漂う瓢箪(ヒョウタン)のように浮き浮きした気持ちで世の中の事の良しあしの区別もすることなく書き綴ったものであるから、これを読んだ読者はきっと手をたたいて笑うであろう。だから書名を『可笑記』(笑いの書)としたのだ」と述べている。江戸の社会を簡潔明快な俗文体で表現していると同時に、作者の浪人という視点から無能な支配層に対する民衆の批判も代弁している。
作者の如儡子斎藤親盛は最上家の浪人で、武家社会の辛酸を舐めた人物だった。本書は『徒然草』『甲陽軍鑑』『沙石集』などを主たる典拠にしていて、、林羅山の著書『巵言抄』『童観抄』の言説も利用している。しかし、名は伏せられているものの、羅山の合理主義的な見地から聖賢の道を論ずる姿勢への批判も見られ(巻四)、作者の苦悩が読み取れる[1]。またこれは市井の一浪人が文筆を持って当代と渡り合う、文学史における最初の例と言える[1]。
原典の構成と成立期
五巻五冊。巻一・48段、巻二・48段、巻三・42段、巻四・52段、巻五・90段、これに序と跋を加え計282段で構成されている。形式は随筆の形態をとり、配列は相互に特別深い関係はない。内容は、侍の心得に関するもの、一般庶民の心得、さらに儒教仏教の教え、さらに説話的なものなど多岐にわたる。この作品の成立時期は、跋文に「于時寛永十三 孟陽中韓」とあり、刊記に「寛永壬午季秋吉旦刊行」と記されている、よって寛永13年(1636)1月に成立し、6年半後の寛永19年(1642)9月に初版が出版されたことになる。しかし、作品のなかで、寛永15年(1638)の島原の乱について記述している箇所があることから成立後も加筆が続けられ、最終的には刊記にある寛永19年頃の完成で[2]あろうと推測される。

影響と価値

『徒然草』の近世版ともいわれる一方で、物事を無常観にとらわれる事無く全体としては明るく現実的にとらえている。また作者は兼好のように悟り切ることはできずむしろ感情の赴くまま批判的精神を吐露している。近世随筆文学の道を開いたものであり、その後多くの追随作品を生んでいる。すなわち『ひそめ草』『身の鏡』『他我身の上』『理非鏡』等々である。さらに仮名草子中最大の作者浅井了意はその著作活動の端緒で『可笑記評判』を著しその代表作『浮世物語』の後刷本を『続可笑記』として出版しているほどで、また井原西鶴も本書にちなんで『新可笑記』を発刊している。堂上俳諧人から高僧・武士・一般庶民にいたるまで多数の人に読まれ、いわゆる「〇〇可笑記」と呼ばれる浮世草子の嚆矢となり、その影響は大きいものがある。

脚注

1. ^ a b 江本 2000, pp. 19-21.
2. ^ 昭和女子大教授・深沢秋男

原典と参考書

• 『可笑記』原本の諸本

• 【1】 寛永6年跋写本     現在、所在未詳。

• 【2】寛永十九年版十一行本

• 〔1〕 京都大学文学部 〔2〕 大阪女子大学図書館 〔3〕 小川武彦氏 〔4〕 香川大学図書館・神原文庫 〔5〕 九州大学国語学国文学研究室  〔6〕 京都大学図書館 〔7〕 国立公文書館・内閣文庫 〔8〕 後藤憲二氏 〔9〕 大東急記念文庫   〔10〕 東京大学教養学部第一研究室 〔11〕 東京大学図書館        〔12〕 平井隆太郎氏(平井太郎〈江戸川乱歩〉氏旧蔵) 〔13〕 横山重氏・赤木文庫 〔14〕 龍谷大学図書館 〔15〕 龍門文庫 〔16〕 早稲田大学図書館 〔17〕 渡辺守邦氏 〔18〕 鹿島則幸氏旧蔵・桜山文庫(深沢秋男旧蔵、昭和女子大学所現蔵) 〔19〕 深沢秋男 〔20〕 ケンブリッヂ大学図書館・アストンコレクション(未見) 〔21〕 台湾大学図書館(未見) 〔22〕 岐阜県立図書館(未見)

• 【3】 寛永十九年版十二行本

• 〔1〕 国立国会図書館 〔2〕 九州大学国語学国文学研究室 〔3〕 神宮文庫 〔4〕 日本大学図書館・武笠文庫 〔5〕 会津若松市立図書館(未見)

• 【4】 無刊記本

• 〔1〕 長澤規矩也氏旧蔵(深沢秋男旧蔵、昭和女子大学現蔵) 〔2〕 お茶の水図書館・成簣堂文庫・I 〔3〕 お茶の水図書館・成簣堂文庫・Ⅱ 〔4〕 香川大学図書館・神原文庫  〔5〕 学習院大学国語国文学研究室    ●学習院女子大学高等部 〔6〕 関西大学図書館 〔7〕 京都大学図書館・潁原文庫・I 〔8〕 京都大学図書館・潁原文庫・Ⅱ 〔9〕 慶応大学図書館 〔10〕 国学院大学図書館 〔11〕 国文学研究資料館 〔12〕 実践女子大学図書館・黒川真頼・黒川真道蔵書 〔13〕 天理図書館 〔14〕 東京国立博物館 〔15〕 東北大学図書館・狩野文庫 〔16〕 名古屋大学国文学研究室 〔17〕 西尾市立図書館・岩瀬文庫    ●弘前市立図書館 〔18〕 山岸徳平氏 〔19〕 龍門文庫 〔20〕 早稲田大学図書館 〔21〕 大倉精神文化研究所附属図書館(未見) 〔22〕 岐阜大学図書館(未見)


• 【5】 万治二年絵入本

• 〔1〕 横山重氏旧蔵・赤木文庫(深沢秋男旧蔵、昭和女子大学現蔵) 〔2〕 青森県立図書館・工藤文庫 〔3〕 秋田県立図書館 〔4〕 上田市立図書館・藤盧文庫 〔5〕 大洲市立図書館 〔6〕 小川武彦氏 〔7〕 お茶の水図書館・成簣堂文庫 〔8〕 香川大学図書館・神原文庫 〔9〕 学習院大学国語国文学研究室・Ⅰ 〔10〕 学習院大学国語国文学研究室・Ⅱ 〔11〕 京都府立総合資料館 〔12〕 慶応大学附属図書館 〔13〕 国立国会図書館・Ⅰ 〔14〕 国立国会図書館・Ⅱ 〔15〕 佐賀大学附属図書館・小城鍋島文庫 〔16〕 鶴岡市立図書館 〔17〕 天理図書館 〔18〕 東京国立博物館 〔19〕 東京大学附属図書館・青州文庫 〔20〕 東京大学文学部図書室・印度哲学研究所 〔21〕 東北大学附属図書館・狩野文庫 〔22〕 東洋文庫・岩崎文庫 〔23〕 都立中央図書館・加賀文庫 〔24〕 中野三敏氏 〔25〕 山口大学附属図書館・棲息堂文庫 〔26〕 龍門文庫 〔27〕 早稲田大学図書館 〔28〕 カリフォルニア大学・東亜図書館(未見) 〔29〕 大英博物館・図書館(未見)

• 【6】 その他、取合本

• 〔1〕 印刷博物館(取合本) 〔2〕 大阪府立中之島図書館(取合本) 〔3〕 学習院大学国語国文学研究室(取合本) 〔4〕 天理図書館(取合本) 〔5〕 早稲田大学図書館(取合本) 〔6〕 渡辺守邦氏(取合本)

• 【7】 写本

• 〔1〕 甲南女子大学図書館 〔2〕 東京大学国語国文学研究室 〔3〕 昭和女子大学図書館(深沢秋男旧蔵)

• 国書刊行会 編 『徳川文芸類聚』第二巻 国書刊行会、1914年、7頁。NDLJP:945807/7。
• 版本=寛永19年11行本・寛永19年12行本・無刊記本・万治2年絵入本
• 近代日本文学大系 1・仮名草子集成 14
• 田中伸・深沢秋男・小川武彦『可笑記大成』1974年4月、笠間書院。

参考書としては「仮名草子集成」(東京堂出版)他。
• 『斎藤親盛(如儡子)伝記資料』 / 深沢秋男(所沢 : 近世初期文芸研究会、2010年10月)非売品。国立国会図書館請求記号:KG216-J12
• 江本裕 『近世前記小説の研究』 若草書房〈近世文学研究叢書〉、2000年。ISBN
関連項目
• 仮名草子
• 浮世草子
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『可笑記』(かしょうき)    【はてな キーワード】

随筆的仮名草子。版本、5巻5冊。

作者

如儡子(にょらいし)・斎藤親盛(さいとう ちかもり)
版本の奥書には「于時寛永十三/孟陽中韓江城之旅泊身筆作之」とあり、「如儡子」の署名はない。しかし、当時の書籍目録にも「五冊 可笑記 大小 如儡子作」(寛文10年刊『増補書籍目録 作者付大意』)とあり、二本松藩の『相生集』にも『可笑記』及び作者に関して、詳細に記されているので、この「江城之旅泊身」が如儡子・斎藤親盛であることは明白である。

成立

寛永6年(1629)執筆開始か。二本松藩の『相生集』の編者は、斎藤家の子孫から『可笑記』の写本を見せてもらい、その跋に「寛永六年の秋の頃に思ひ初て、拙き詞をつゞり初め、……」とあったと記しているので、執筆開始は、親盛27歳の頃、寛永6年としてよいだろう。最上家を辞し、浪人となって七年後のことである。

内容

中世の随筆、吉田兼好の『徒然草』の形式にならった随筆風の形式をとっている。巻1=48段、巻2=48段、 巻3=42段、巻4=52段、巻5=90段、これに、序と跋を加えて、全282の長短の文章から成る。
各段の配列は、相互に深い関連はなく、内容別に分類すると、一般人の心得に関するもの115段、侍の心得に関するもの51段、主君の道に関するもの39段、身辺雑記的なもの25段、儒教・仏教に関するもの22段、説話的なもの13段、その他15段となっている。

特色

この作品は、中世の『徒然草』の影響を受けているが、『徒然草』のように来世思想に基づくものではなく、近世初期の作品にふさわしく、明るい現世肯定・人間重視の立場から述べられている。第一の特色は、鋭い批評精神にあり、その批判の対象は、主として、無能な大名や、大名を補佐する、家老・出頭人に向けられている。「如儡子」というペンネームを使い、各段「昔さる人のいへるは」と書き出して、現実の話ではないような形式をとっているのは、この厳しい批判をカムフラージュするための手段であったと思われる。
次に注目すべき特色は、作品の文体である。当時の他の仮名草子作品の多くは、中世的な雅文体であったのに対して、この作品は、漢語や俗語など、現実に使われている言葉を自由に取り入れた、一種の俗文体で書かれている。この簡潔明快な文体は、神や仏に救いを求めることなく、人間の力を信じ、来世よりも現世を重視する、近世初期の新しい社会を表現するのに適したものであった。
次に指摘すべき点は、作者が、一段一段を作る時、実に多くの先行著作を摂取しているということである。長い戦乱で文化が中断していたこともあり、近世初期の人々は、自分たちの作品を創る前に、まず、古代・中世の文化の吸収・理解から着手した。仮名草子において、典拠の問題は、全体の作品にわたって言えることである。『可笑記』が多く利用した先行作品は、『徒然草』と『甲陽軍鑑』である。『徒然草』では、その注釈書の『野槌』や『寿命院抄』も利用している。そのほか、『沙石集』『十訓抄』『清水物語』『童観抄』『巵言抄』『論語』『孟子』などをはじめ、日本や中国の広範囲の著作に及んでいる。親盛は、若い頃、諸国を遊学して、書写するところの写本は数百巻に及んだと言うが、その素養が活かされているものと思われる。そして、これらの先行著作の利用にあたって、作者はそれらを充分に消化して、自由自在に取り入れている。その力量は高く評価してよいものと思われ、これも、この作品の重要な特色となっている。

諸本

1、写本、5巻10冊、寛永12年成立。 二本松藩士・大鐘義鳴は、天保12年(1841)に、『相生集』の「文学」の項を執筆するに当たって、斎藤親盛の子孫、9代・英盛から、斎藤家に代々伝わる資料を閲覧している。その中に『可笑記』の写本があったという。その序には「寛永十二年孟陽中幹東海旅泊身如儡子綴筆」とあり、跋には、「寛永六年の秋の頃思ひ初めて、拙き詞をつゞり初め、……万治庚子孟陽中幹武心士峯居士跋書」とあったという。この斎藤家の資料は、現在、所在が未詳であるが、今後、発見される可能性は十分にある。

2、寛永19年版11行本、大本、5巻5冊。この作品の初版本であり、写本に次ぐ原初的な形態を伝えている、最も優れた本文である。奥書には「于時寛永十三孟陽中韓江城之旅泊身筆作之」 (1636)とあり、刊記は「寛永壬午季秋吉旦刊行」(寛永19年、1642)とある。

3、寛永19年版12行本、大本、5巻5冊。この12行本は、11行本の準かぶせ版であり、11行本をかなり忠実に伝えている。句読点を付加し、振り仮名を多くして、その普及に役立った点に意義がある。11行本を利用して1行増やしたもので、奥書も刊記も11行本と同じである。刊行年は断定できないが、慶安元年(1648)頃の刊行かと推測している。

4、無刊記本、大本、5巻5冊。この版は、12行本を底本にしたものと思われるが、特殊な表現を一般的に改め、回りくどい文章を簡略化し、話し言葉を書き言葉に改め、仮名を漢字に改め、字体も小さくしており、12行本以上に普及版としての性格を持っている。後続の絵入本や可笑記評判が、共にこの無刊記本を底本にしたものと推測され、その意味では、この本文は流布本的存在であると言い得る。

5、万治2年版絵入本、半紙本、5巻5冊。無刊記本を底本に使用し、底本に対して忠実であるが、むしろ盲従的である。機械的な誤読・誤刻が多く、劣った本文と言える。しかし、この版は師宣風の挿絵・41図を付加し、半紙本という軽装版にして読者に応えたという点で意義があったと思われる。

6、万治三年刊、可笑記評判、大本、10巻10冊。著者は浅井了意。厳密には『可笑記』の諸本には入らないが、『可笑記』の本文の大部分を収録しているので、参考として加えてもよいだろう。本書は、まず、可笑記の本文を掲げ、1字下げて、批評を加えるという体裁をとっている。可笑記本文の底本は無刊記本を使用したものと推測される。無刊記本の誤りを正す事も多いが、誤脱は多く、可笑記本文としては最も劣ったものと言い得る。全280段の内、批評を付加したのが231段、批評を省略したのが46段、可笑記本文・批評共に省略したのが3段となっている。

複製

1、仮名草子選集・国立台湾大学図書館本影印(1972年1月、台北・大新書局発行)。寛永19年版11行本の複製で、巻頭に、巻1・巻3・巻5の原表紙の写真を掲げ、略書誌を付す。複製は、原本を解体して、1丁開いた形で収めている。
2、可笑記大成―影印・校異・研究―(田中伸・深沢秋男・小川武彦共編著、昭和49年4月30日、笠間書院発行)。寛永19年版11行本を複製し、脚注の形式で、寛永19年版12行本・無刊記本・万治2年版絵入本との校異を掲げる。

翻刻

1、徳川文芸類聚・第2・教訓小説(朝倉無声例言、山田安栄・伊藤千可良・岩橋小弥太校、大正3年6月25日、国書刊行会発行)。振り仮名は省略。巻1は無刊記本、巻2~巻五は寛永19年版11行本を底本に使用しているものと推定される。
2、近代日本文学大系・第1・仮名草子集(笹川種郎解題、昭和3年12月18日、国民図書株式会社発行)。送り仮名・振り仮名など、原本とはかなり離れており、異同関係から推測すると、『徳川文芸類聚・第二・教訓小説』を参照して本文作成をした可能性がある。なお、『可笑記』の挿絵として掲げるものは、古浄瑠璃『公平天狗問答』の挿絵である。
3、仮名草子集成・第14巻(朝倉治彦・深沢秋男共編、1993年11月20日、東京堂出版発行)。寛永19年版11行本を底本として、無刊記本との異同を行間に示した。ただし、全面的な異同ではない。
4、教育社新書・原本現代訳51(渡辺守邦訳、1993年11月20日、教育社発行)。寛永19年版11行本を底本にした現代語訳(抄訳)。

参考

◎斎藤親盛(如儡子)の研究→http://www.ksskbg.com/nyorai/nyorai.html
◎平成22年度香川県公立高校、平成23年度京都府公立高校の入学者選抜学力検査に『可笑記』出題された。詳細 → http://www.ksskbg.com/nyorai/nyorai.html
• 江戸時代の文学作品
• 江戸時代の随筆

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●【ウィキペディア】は、何方かが立項。私が加筆したもの。【はてなキーワード】は、私が立項・執筆。
ネット百科事典で、仮名草子作品中、これほど詳細に記述されている作品は無いと思う。私が研究している作品ゆえ、リキを入れて記述した。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。