『可笑記』香川県公立高校入試に出題

『可笑記』香川県公立高校入試に出題

  • 2019.10.31 Thursday
『可笑記』香川県公立高校入試に出題

■ 平成22年度香川県公立高等学校入学者選抜のための学
 力検査に『可笑記』が出題された。

………………………………………………………………………

平成二十二年度 国語問題

問題 1 小説  村山由佳 「約束」
問題 2 古文  如儡子  「可笑記」
問題 3 論説文 渓内謙  「現代史を学ぶ」
問題 4 課題作文

………………………………………………………………………

問題 二 次の文章を読んで、あとの(一)~(五)の問い
     に答えなさい。

昔もろこし漢の文帝の御代に、一日千里をかくる名馬を進上しける時、公卿大臣、めでたき御重宝かなと申しあへりければ、文帝あざ笑ひ給ひて仰せけるは、我此の馬を重宝とは思はず、其の仔細は、我たまたま遊山なぐさみにありく時は、一日にやうやう三十里、また合戦などの時も、多くて五十里に過ぎず。かやうにそろりそろりとありきてこそ、数万の人馬も疲れず、我に続いて忠功をなす。もしまた時によつていそぐ事ありといへども、かねて疲れぬ人馬なれば、我によく続いて忠功をはげます。されば我一人千里をかくる馬に乗りたりとも、数万の人馬、千里をかけずんばあへて益なしとて、主のもとへ返し給ふ。

(注1)もろこし=昔、日本で中国を指して呼んだ名称。
(注2)漢の文帝=漢の第五代皇帝。
(注3)千里をかくる=非常に長い距離を走る。里は距離の
    単位。
(注4)公卿=朝廷に仕える高官。
(注5)仔細=事の詳しい事情。詳細。
(注6)遊山なぐさみにありく=遊びや気晴らしに出歩く。

(一)①に めでたき御重宝かな とあるが、この言葉には
  公卿大臣のどのような気持ちが表れているか。次の1~
  4から最も適当なものを一つ選んで、その番号を書け。
  1 おめでたい宝物になりますようにと祈願する気持ち
  2 すばらしい宝物でございますなあと感嘆する気持ち
  3 役に立つ宝物になるのでしょうかと困惑する気持ち
  4 ぜいたく過ぎる宝物でございますと忠告する気持ち

(二)②に 文帝あざ笑ひ給ひて仰せける とあるが、文帝
  が言った言葉はどこからどこまでか。初めと終わりの三
  字をそれぞれ抜き出して書け。

(三)③に 合戦などの時も、多くて五十里に過ぎず とあ
  るが、これはどういう意味か。それを説明しようとした、
  次の文の □□□□□ 内にあてはまる言葉を、五字以
  内で書け。
   合戦などの時であっても、自分の乗る馬が一日に□□
   □□□は、多くても五十里に過ぎない

(四)④の かやうに は、現代かなづかいでは、どう書く
  か。ひらがなを用いて書きなおせ。

(五)⑤に 主のもとへ返し給ふ とあるが、なぜ文帝は
  名馬を持ち主のもとへ返したのか。次の1~4から最も
  適当なものを一つ選んで、その番号を書け。

  1 非凡な能力を持つ珍しい馬ではあるが、持久力に劣
   るという欠点を持っているため、平凡な馬に比べ使い
   にくいから
 2 この馬は合戦の時には役立つが、平常時にはその能
  力をいかせず、平和なこの時代にはあまり必要のない
  ものだから
 3 自分ひとりが名馬に乗っても、それに家臣たちがつ
  いて来られないのでは意味がなく、価値があるとは言
  えないから
 4 自分だけが名馬を持つと、家臣の中にはそれをねた
  む心を持つ者が生まれ、自分への忠誠心が弱くなって
  しまうから
……………………………………………………………………
● この段は、『可笑記』巻4の30段である。出題にあたって、漢字仮名、送り仮名など、一部改められている。

■ 平成23年度京都府公立高等学校入学者選抜のための
  学力検査に『可笑記』が出題された。

〈各教科の特色と傾向〉の【国語】では、次のようにある。

「1 古文では、近世の文章を題材とし、内容を読み取る力
  をみるとともに、歴史的仮名遣いなどについて問い、古
  典を理解する基礎が身に付いているかどうかをみた。
 〔出典〕 「可笑記(かしょうき)」(「近代日本文学大系 第
  一巻」国民図書株式会社 より)
  如儡子(にょらいし)による、江戸時代初期の仮名草子。
  随筆風の形式をとっている。
  問題文は、人の口を出入りする「よきもの」「いたづら
  もの」と、それらの出入りに際しての態度について述べ
  た文章である。自分自身の言動にも結びつく内容を読み
  取る中で、考えを深め、古典に親しむ態度が養われてい
  くことを期待する。

 2 現代文では、(省略)」
…………………………………………………………………
一 次の文章は、「可笑記」の一節である。注を参考にして
 これを読み、問い⑴~⑸に答えよ。(12点)

  人の口は、一切善悪の出で入りする門戸なり。かるがゆゑによき番衆をすゑおきて、出入りするものどもをあらためらるべし。其のいはれは、いふまじき人のうはさをあざけり、表裏などをいひて身命をあやまつ。是れは口のうちより、外へ出づるいたづらものどもなり。又くふまじき物をくひ、のむまじき物をのみ過して、病を生じ身命をあやまつ、是れは口の外よりうちへ入るいたづらものどもなり。又金言妙句をいひ、詩歌文章のおもしろきを作りなどは、口のうちより外へ出づるよきものどもなり。又もろもろの病にくるしむ時、それぞれの薬をのみて平愈し、あるひはきかつにおよんで、水をのみ食をくらひ本復するなとは、外より口のうちへ入るよきものどもなり。かの番衆と申すは、をのれおのれが心に御座候間、よくよくこの善悪をわきまへ分別して、善をば出入り自由自在に、悪をば、出入りかたくきんぜいすべし。少しも此の番衆ゆだんしては、大事出来すべし。
             (「近代日本文学大系」による)

 注
① かるがゆゑに=だから
② 番衆=番人
③ いはれ=理由
④ 表裏=作りごと
⑤ 身命をあやまつ=身を危険にさらす
⑥ 金言妙句=立派な格言や優れた言葉
⑦ きかつ=飢えと渇き
⑧ 御座候間=ございますので
⑨ きんぜい=禁止

⑴ 本文中の 人の口は、一切善悪の出で入りする門戸なり
 は、「口」を「門戸」にたとえた比喩表現である。このように、
 比喩表現が用いられているものとして最も適当なものを、
 次の(ア)~(エ)から一つを選べ。……答の番号【1】
(ア) 今は昔、竹取の翁といふものありけり
(イ) 雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、い
  とをかし
(ウ) 沖には平家、舟をいちめんに並べて見物す
(エ) 月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人
  なり

⑵ 本文中の すゑをきて・いひて は歴史的仮名遣いで書
 かれている。これらをすべて現代仮名遣いに直して、それ
 ぞれ平仮名で書け。…………………………答の番号【2】
⑶ 本文中の 出入りするものどもをあらためらるべし の
 解釈として最も適当なものを、下段の(ア)~(エ)から
 一つ選べ。………………………………………答の番号【3】
(ア) 出入りするものを改善することで新しくなさるのが
  よい
(イ) 出入りするものを吟味して善か悪か見分けなさるの
  がよい
(ウ) 出入りするものの善悪をわかりやすく説明なさるの
  がよい
(エ) 出入りするもののうち悪を善に置き換えなさるのが
  よい

⑷ 次の会話は、本文をもとに行われた、花子さんと太郎さ
 んの話し合いの一部である。これを読み、後の問い㊀・㊁
 に答えよ。
―――――――――――――――――――――――――――
 花子さん 人の口を門やとびらに見立てるという発想は
      おもしろいね。                         
 太郎さん 確かにいろいろなものが口を出入りするから
      ね。口の「番衆」として、「□□□」が果たす役
      割は重要だよ。
 花子さん そう。この「番衆」の役割は、少しの「ゆだん」
      もなく「□□□」をすることだね。
 太郎さん うん。ことわざの「口はわざわいの門」という
      のは、「番衆」が「□□□」を通してしまうこと
      を戒めたものだろう。
 花子さん でも、口に出したことが「わざわい」をもたら
      すばかりではないよ。この前の体育大会の
      「大縄跳び」を思い出してみて。
 太郎さん あのときはみんなが大声で応援してくれて、
      どんどん記録がよくなっていったね。跳んで
      いて楽しかったよ。
 花子さん 跳ぶ回数が増えるにつれて、私も大きな声を
      出して応援していたよ。あの声援は、まさし
      く「□□□」だったと思うな。
―――――――――――――――――――――――――――
㊀□□□・□□□に入る最も適当な語を、本文中から□□□
 は漢字一字で、□□□は漢字二字て、それぞれ抜き出して
 書け。……………………………………………答の番号【4】

㊁本文中の二重傍線部(  )のうち、□□□・□□□に入
 る最も適当なものを、それぞれ次の(ア)~(エ)から一
 つずつ選べ。……………………………………答の番号【5】
(ア) 口のうちより、外へ出づるいたづらものども
(イ) 口の外よりうちへ入るいたづらものども
(ウ) 口のうちより外へ出づるよきものども
(エ) 外より口のうちへ入るよきものども

⑸ 本文に述べられていることとして最も適当なものを、次
 の(ア)~(エ)から一つ選べ。………………答の番号【6】
(ア) 口にするものの善悪をよく判断して、その出入りを
  厳しく取り締まるべきだということ。
(イ) 口には善だけを選んで入れることと悪だけを選んで
  出すことの二つの役割があるということ。
(ウ) 口にするものには善悪ともに含まれているので、適
  度な量の出入りにとどめておくべきだということ。
(エ) 口はすべての善悪を生み出すもとであるから、言葉
  や食べ物には気をつけなければならないということ。

…………………………………………………………………

● 出題されたのは、『可笑記』巻二の二十六段である。近世
 初期の仮名草子作品は、仮名遣いなど、混乱しているが、
 その点は、問題作成の時に修正されている。

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。