君 『源氏物語』は読んだのかね ?

君  『源氏物語』 は読んだのかね ?

 

◆卒業論文面接諮問

 

  • 法政大学の卒業論文面接諮問は、大学院棟の研究室で行われた。教務課から速達書留便で、日時場所が指定されていた。控室に30分前に集まる事。職員の指示に従って、指導教授の待つ部屋に入る。重友先生が居られ、机の上には、私の提出した卒論が置かれていた。失礼します、と言って入室。しばらくすると、先生が、掛け給え、申された。

 

  • 着席すると、またしばし沈黙。先生は、やがて口を開かれた。「私は、これを読んで、明るい思いがしました」と申された。諮問は、卒論の内容に及び、「ところで、『源氏物語』は読んだのかね ?」 申された。「はい。池田亀鑑の古典全書で読みました」とお答えした。

 

◆『資本論』への挑戦

 

  • 私が法政大学へ入学した時の総長は、大内兵衛先生だった。大内先生は、入学式の式辞で、諸君、入学、おめでとう。諸君が在学中に、マルクスの『資本論』を読み通せば、有意義な大学生活となるだろう。と申された。

 

◆『資本論』から『源氏物語』へ

 

  • 私は、早速、〔資本論研究会〕に入会して、週1回の研究会に参加した。顧問の先生と、同会の先輩の御指導で、合同出版のテキストで学習した。ノートを作り、1行1行、語句を調べて欠席しなかった。3ヶ月ほど経った時、ふと考えると、参加学生は、経済・法科で、文学は私のみだった。日本文学における『資本論』は何か、『源氏物語』だろう。そこで、資本論研究会を辞めて、『源氏物語』を読むことにした。

 

  • 机の前に年立と、各巻の登場人物関係図を貼った。手順としては、まず、現代語訳で荒筋を頭にいれ、原文は、池田亀鑑校訂・校訂の朝日古典全書にした。現代語訳は谷崎源氏にして全巻購入し、読みだしたが、どうもしっくりしない。与謝野源氏に切り替えたら、すーと入ってきた。谷崎源氏は、何故ためなのか、それは、当時わからなかった。しかし、後年、昭和女子大学の特殊研究講座に、秋山虔先生が見えられ、同様の評価をされていたのには、驚いた。

 

  • 『源氏物語』の原文の読破は、大変だった。次々に難解な言葉が出てくる。そのたびに、頭注を読み、古語辞典を引く。最初は、1時間かけて、3行位しか進まない。しばらく続けると、頭注の内容が予測できるようになった。やがて、注記を見るのは、1頁で1回か2回になって、『源語』の世界に没入できるようになった。そんな経過で読破していたので、重友先生の質問に対して「はい。」とお答えしたのである。

 

 

 

 

投稿者:

fukaaki

近世文学、特に、仮名草子、近世日記文学を研究している。 昭和女子大学に勤務していたが、定年退職。現在、同大学名誉教授。 仮名草子は、特に、如儡子・斎藤親盛を研究。日記文学では、井関隆子の研究をしている。