仮名草子 かなぞうし

仮名草子 かなぞうし

  • 2019.10.18 Friday
仮名草子 かなぞうし

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動検索に移動
仮名草子(かなぞうし)とは、江戸時代初期に仮名、もしくは仮名交じり文で書かれた、近世文学における物語・散文作品を総称したもの。 井原西鶴の『好色一代男』が出版された天和2年(1682)頃を区切りとするのが一般的である[1]。

目次

• 1概略
• 2内容
• 3主な作品
• 4脚注
• 5参考文献

概略

御伽草子の延長に生まれ、仮名を用いた庶民向けの読み物として出版され、雑多な分野を含む。1ジャンルとしては異様に幅広い範囲を扱うため、中世文学と近世文学の過渡期の散文を一括りにした呼称と言える。
中世文学と仮名草子の違いのひとつに出版がある[2]。中世文学の複製方法が写本であったのに比べ、近世には仮名草子のような俗文芸も木版で大量に刷り販売されるようになった。手慰みに書かれた中世文学とは違い、仮名草子は製本され世間に流布されることが前提にある。平和の訪れとともに識字階層も増え、新たな読者層の要求に応える職業作家も現れるようになった。
作者の多くは当時の知識人層であり、浅井了意、鈴木正三(しょうさん)、烏丸光広らが知られている。 また、斎藤親盛や江島為信など、教養のある浪人が一時の糊口をしのぐために書いた作品が多い[3]。
明暦年間(1655-)から寛文年間(1661-1672)にかけてが仮名草子の最盛期と言われる[4]。延宝年間(1673-)ごろより西山宗因を盟主とする談林俳諧が隆盛し文壇の主流は関西へと移った。説話からハナシへと文学の流行が移行していくにつれ、教説性の強い仮名草子は下火となった[5]。やがて、宗因門下の井原西鶴による『好色一代男』などの優れた文芸が著されるようになり、これは後に浮世草子と区別して呼ばれるようになる。

内容

初期の仮名草子は戦国時代の回顧や大名の一代記などが多かった。通じて啓蒙的な内容のもの、儒教的な教訓を含んだ物語や説話集に人気があった。笑話のほか、名所案内記、また野郎評判記、遊女評判記のように実用的なガイドブックとして読まれたもの、事件や災害などを叙述する見聞記など多岐にわたる。
寛文10年に刊行された『増補書籍目録』では、当時の書籍が36項目に分類されている。

主な作品

• 仁勢物語(作者不詳)
• 竹斎(富山道冶)
• 恨之介(作者不詳)
• 清水物語(朝山意林庵)
• 可笑記(如儡子、斎藤親盛)
• 浮世物語(浅井了意)
• 東海道名所記(浅井了意)
• あづま物語(作者不詳・遊女評判記)
• 難波鉦(酉水庵無底居士・遊女評判記)
ほか多数。深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究文献目録』によれば、300点におよぶ。

脚注

1. ^ 谷脇 1999, p. 627.
2. ^ 谷脇 1999, p. 628-630.
3. ^ 江本 2000, pp. 30-31.
4. ^ 江本 2000, p. 22.
5. ^ 江本 2000, pp. 32-38.

参考文献

• 仮名草子の叢書として約200編を収める「仮名草子集成」(全70巻の予定、東京堂出版)がある(2019年3月現在、61巻まで刊行。参考:[1])。
• 谷脇理史『仮名草子集』小学館、1999年。
• 江本裕 『近世前期小説の研究』若草書房、2000年。
• 坪内逍遥・水谷不倒『近世列伝体小説史』春陽堂、明治30年。
• 水谷弓彦『仮名草子』水谷文庫、大正8年
• 水谷不倒『新撰列伝体小説史 前編』、春陽堂、昭和7年。
• 北条秀雄『改訂増補 浅井了意』笠間書院、昭和47年。
• 田中伸『仮名草子の研究』桜楓社、昭和49年。
• 水田潤『仮名草子の世界―未分化の系譜―』桜楓社、昭和56年。
• 野間光辰『近世作家伝攷』中央公論社、昭和60年。
• 渡辺守邦『仮名草子の基底』勉誠社、昭和61年。
• 野田寿雄『日本近世小説史 仮名草子篇』勉誠社、昭和61年。
• 三浦邦夫『仮名草子についての研究』おうふう、平成8年。
• 松原秀江『薄雪物語と御伽草子・仮名草子』和泉書院、平成9年。
• 市古夏生『近世初期文学と出版文化』若草書房、平成10年。
• 青山忠一『近世仏教文学の研究』おうふう、平成11年。
• 花田富二夫『仮名草子研究―説話とその周辺―』新典社、平成15年。
• 近世文学書誌研究会編『近世文学資料類従・仮名草子編・古板地誌編』 全61冊、勉誠社、昭和47~56年。
• 東洋文庫・日本古典文学会編『仮名草子』貴重本刊行会、昭和49年。
• 谷脇理史編『仮名草子集』早稲田大学資料影印叢書刊行委員会・早稲田大学出版部、平成6年。
• 朝倉治彦等編・校訂 『仮名草子集成』 1巻~49巻、東京堂出版、昭和55~平成25年。全70巻で、刊行中。
• 野田寿雄校注『仮名草子集』上・下、日本古典全書、朝日新聞社、昭和35・37年。
• 前田金五郎・森田武校注『仮名草子集』日本古典文学大系90、岩波書店、昭和40年。
• 青山忠一・岸得蔵・神保五弥・谷脇理史校注・訳『仮名草子集 浮世草子集』日本古典文学全集37、小学館、昭和46年。
• 渡辺守邦・渡辺憲司校注『仮名草子集』新日本古典文学大系74、岩波書店、平成3年。
• 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究文献目録』和泉書院、平成16年。
• 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究叢書』全8巻クレス出版、平成18年。
• 田中宏『仮名草子の文学的研究』人間の科学社、2016年。
• 深沢秋男「仮名草子研究の歴史」(「近世初期文芸」33号、2016年12月)
• 深沢秋男「仮名草子の書誌的研究」(「近世初期文芸」35号、2018年12月)

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

仮名草子  かなぞうし  【はてなキーワード】

読書

目次

• 仮名草子とは

仮名草子 (かなぞうし)

【定義】

近世初期、慶長(1596~1615)から天和(1681~84)にかけての、約80年間に作られた、小説を中心とする散文文芸の総称。ただし、このように、散文文芸全般を含める広い範囲とする説と、他方で、物語・小説的な作品に限定すべきであるとする説もある。
この近世初期は、日本歴史の中でも代表的な啓蒙期であり、この時期に、漢字(振仮名付き)交じり仮名書きの通俗平易な読み物が次々と作られた。これら一群の文学的著作に与えられたのが「仮名草子」という名称で、命名は仮名草子研究を切り拓いた水谷不倒である。その数は、はじめは180点ほどであったが、研究が進むにつれて増加して、現在では300点にも達する。
作品の原本は、写本または版本(古活字本・整版本)として伝存するが、版本は出版の黎明期にふさわしく、全体に版式もおおらかで、大きな本が多い。

【分類】

仮名草子は、物語・詩歌・日記・随筆・評論・実録などのように、さまざまな文学ジャンルを包括している。そこで、これらを、どのように分類整理するかという問題が生じる。
野田寿雄氏の説に従って紹介すると以下の通りである。
1、 啓蒙教訓的なもの(教義問答的なもの、随筆的なもの、女性教訓的なもの、翻訳物)
2、 娯楽的なもの(中世風な物語、説話集的なもの、翻訳物、擬物語)
3、 実用本位のもの(見聞記的なもの、名所記的なもの、評判記的なもの)
この分類からもわかる通り、仮名草子は複合ジャンルのような性質をもっている。文学史的には、お伽草子→仮名草子→浮世草子と接続するが、これを小説の系列として考えるならば、小説以外の作品をどう扱うべきか、という問題が今後の課題として残されている。

【範囲】

仮名草子の範囲を考える場合、留意すべき事項は、次の各項目が考えられる。
1、御伽草子との関連。
2、浮世草子との関連。
3、評判記(遊女・役者)との関連。
4、軍書、軍学書との関連。
5、咄本との関連。
6、随筆的著作との関連。
7、名所記、地誌、紀行との関連。
8、教訓書、女性教訓書との関連。
9、仮名仏書、仮名儒書との関連。
10、注釈書(・・・抄)との関連。
11、翻訳物、翻案物との関連。
これらの、各項を具体的に検討することも今後の課題である。

【参考文献】

◎坪内逍遥・水谷不倒『近世列伝体小説史』春陽堂、明治30年。
◎水谷弓彦『仮名草子』水谷文庫、大正8年。
◎ 水谷不倒『新撰列伝体小説史 前編』、春陽堂、昭和7年。
◎ 北条秀雄『改訂増補 浅井了意』笠間書院、昭和47年。
◎ 田中伸『仮名草子の研究』桜楓社、昭和49年。
◎ 水田潤『仮名草子の世界―未分化の系譜―』桜楓社、昭和56年。
◎ 野間光辰『近世作家伝攷』中央公論社、昭和60年。
◎ 渡辺守邦『仮名草子の基底』勉誠社、昭和61年。
◎ 野田寿雄『日本近世小説史 仮名草子篇』勉誠社、昭和61年。
◎ 三浦邦夫『仮名草子についての研究』おうふう、平成8年。
◎ 松原秀江『薄雪物語と御伽草子・仮名草子』和泉書院、平成9年。
◎ 市古夏生『近世初期文学と出版文化』若草書房、平成10年。
◎ 青山忠一『近世仏教文学の研究』おうふう、平成11年。
◎ 江本裕『近世前期小説の研究』若草書房、平成12年。
◎ 花田富二夫『仮名草子研究―説話とその周辺―』新典社、平成15年。
◎ 近世文学書誌研究会編『近世文学資料類従・仮名草子編・古板地誌編』 全61冊、勉誠社、昭和47~56年。
◎ 東洋文庫・日本古典文学会編『仮名草子』貴重本刊行会、昭和49年。
◎ 谷脇理史編『仮名草子集』早稲田大学資料影印叢書刊行委員会・早稲田大学出版部、平成6年。
◎ 朝倉治彦等編・校訂 『仮名草子集成』 1巻~49巻、東京堂出版、昭和55~平成25年。全70巻で、刊行中。
◎野田寿雄校注『仮名草子集』上・下、日本古典全書、朝日新聞社、昭和35・37年。
◎ 前田金五郎・森田武校注『仮名草子集』日本古典文学大系90、岩波書店、昭和40年。
◎ 青山忠一・岸得蔵・神保五弥・谷脇理史校注・訳『仮名草子集 浮世草子集』日本古典文学全集37、小学館、昭和46年。
◎ 渡辺守邦・渡辺憲司校注『仮名草子集』新日本古典文学大系74、岩波書店、平成3年。
◎ 谷脇理史・岡雅彦・井上和人校注・訳『仮名草子集』新編日本古典文学全集64、小学館、平成11年。
◎ 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究文献目録』和泉書院、平成16年。
◎ 深沢秋男・菊池真一編『仮名草子研究叢書』全8巻クレス出版、平成18年。

■仮名草子研究文献目録 → http://www.ksskbg.com/kana/index.html

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

●【ウィキペディア】の項目は、何方かが立項し、私が加筆している。【はてなキーワード】は、私が立項し執筆した。

仮名草子研究者 三浦邦夫氏

仮名草子研究者 三浦邦夫氏

  • 2019.10.14 Monda
仮名草子研究者・三浦邦夫氏

『仮名草子についての研究』平成18年(2006)10月10日発行
おうふう 発行、A5判、652頁

著者略歴
三浦邦夫(みうら・くにお)
昭和12年 秋田県に生まれる。
昭和35年 東北大学文学部国文学科卒業。
昭和37年 東北大学大学院文学研究科国文学専攻修士課程
修了。
秋田県立秋田南高等学校を経て,
昭和41年 秋田工業高等専門学校講師。
昭和46年 秋田工業高等専門学校助教授。
昭和61年 秋田工業高等専門学校教授。(現在に至る)。
平成8年 東北大学より博士(文学)を取得。
論  文「『為人妙』の方法」(「文芸研究」140集,平成7・9)
「『秋寝覚』管見」(「近世初期文芸」第12号,平
成7・12)など。
現住所 〒011秋田市将軍野南

。。。。。。。。。。。。

弔電

三浦邦夫先生の御逝去を悼み、心からお悔やみ申し上げま
す。
三浦先生は『近世初期文芸』の有力な執筆者でした。先生
の御論文によって、雑誌を充実させる事が出来ました。先
生の御論文は、常に鋭い批評性を持ち、それを手堅い実証
性で支える、という特色を備えていました。
先生の御研究の一部は、昨年十月出版された『仮名草子に
ついての研究』にみごとに実を結びましたが、私達は、第
二、第三の御著書を期待していました。この若さで他界さ
れた事は残念でなりません。私達は、三浦先生の仮名草子
研究への念いを継承し、今後も研究を進めてゆく事を、先
生の御霊前に誓います。先生、ありがとうございました。
どうぞ、安らかにお休み下さい。

平成九年四月十一日
近世初期文芸研究会
深沢 秋男

。。。。。。。。。。。。。。

三浦邦夫氏追悼

三浦邦夫氏は、平成九年四月五日零時三十分に他界され
た。三浦氏の病気の事を知ったのは、前年の十二月二十七
日のことであった。奥様のお話によると、十一月十一日に
入院、心筋梗塞で十二月三日に手術を受けたが、その後の
経過は順調とのこと。奥様と私は、最近の医学の進歩に感
謝して、回復を願い、御退院の一日も早い事をと、語り合
った。しかし、本年二月二十七日、バイパス手術を受け、
手術は成功したが、心臓から血液を送り出す力が弱く、以
後、集中治療室での治療が続いた。この間、三浦氏は常に
明るく、意識は明晰で、折々、研究の事なども話しておら
れたとのことである。ベッドの上で、突然上半身を起こし
て、次の瞬間倒れて、そのまま息を引きとられたという。
氏はその時まで、御自分の生を信じておられたようである
とも、奥様から教えて頂いた。大著を世に送り出して、ホッ
卜はされたと思うが、さらに、次の研究に関して、あれこ
れと思いを馳せておられたのではないかと想像するにつけ
ても、この早すぎる御他界が残念でならない。
三浦邦夫氏の御冥福を心からお祈り申し上げます。

平成九年十一月十四日         深沢秋男

。。。。。。。。。。。。。

●三浦邦夫先生と私は、同じ仮名草子研究の仲間として、非常に親しく交流させて頂き、長年月に亙って御指導を賜わった。先生とは、何回も何回も手紙のやり取りをし、電話で何回も何回も話し合っていた。しかし、実は、一度もお会いしたことがない。近世文学会で、今度、お会いしましょう、と、これも何回も打合せながら、すれ違いであった。

●いずれ、その内に、お会いできる、お互いにそう思っていた。それが、永久のわかれとなってしまった。私は、『井関隆子日記』の件で、東北大学の新田孝子先生とは、特別に交流させて頂いていた。新田先生のお話によると、三浦先生の御葬儀には、300人以上の方々が参列され、しめやかに執り行われたとのことであった。

●今、私は、三浦先生の御論文を、二読、三読させて頂き、学問の恩恵を賜わっている。


『仮名草子集成』第62巻 発行

『仮名草子集成』第62巻 発行

  • 2019.10.11 Friday

『仮名草子集成』第62巻 発行

柳沢昌紀・飯野朋美・
伊藤慎吾・安原眞琴 編
2019年10月10日・東京堂出版発行
A5判・310頁18000円+税

目次

例言
第62巻 凡例
『仮名草子集成』で使用する漢字の字体について
ふしんせき (正保二年四月板、三巻合一冊)・・・・・・   1
丙辛紀行(寛永十五年九月板、一冊)・・・・・・・・・・  51
北条五代記(寛永十八年二月板、十巻十冊) ・・・・・・・  75
保昌物語(寛文頃無刊記板、三巻合二冊、絵入)・・・・・・ 265
解題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 291
解題追加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 298
編者略歴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 306
写真・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 305

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

仮名草子集成 前責任者

朝倉治彦 (あさくら はるひこ)
大正十三年東京生れ。昭和二十三年國學院大学国文科(旧制)卒、二十五年同大学特別研究科(旧制)修。国立上野図書館司書・国立国会図書館司書(昭和六十一年依願退職)。元四日市大学教授兼図書館長。仮名草子その他、著編書論文多し。平成二十五年九月没。

編集責任者

柳沢昌紀 (やなぎさわ まさき)
昭和三十九年生れ。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。現在、中京大学教授。〔主要編著書・論文〕『江戸時代初期出版年表』(共編 勉誠出版)、「甫庵『信長記』初刊年再考」(『近世文芸』八六号)など。

共編者

飯野朋美 (いいの ともみ)
昭和五十六年生れ。大妻女子大学大学院博士後期課程単位取得退学。現在中京大学非常勤講師。〔主要論文〕「九品山浄真寺蔵『名号威徳物語』について―付、挿絵の検討—」(『書物・出版と社会変容』20号)、「浄念寺蔵『珂碩上人伝記』に見える奇瑞譚—下巻を中心に―」(『中京大学国際教養学部論叢』9-2)など。

伊藤慎吾 (いとう しんご)
昭和四十七年生れ。國學院大學大学院博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。現在、国際日本文化研究センター客員准教授。〔主要著書〕『中世物語資料と近世社会』(三弥井書店)、『室町戦国期の文芸とその展開』(同)、『擬人化と異類合戦の文芸史』(同)、『〈生ける屍〉の表象文化史—死霊・骸骨・ゾンビー』(共著、青土社)など。

安原眞琴 (やすはら まこと)
昭和四十二年生れ。立教大学文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。現在立教大学兼任講師。〔主要著書〕『『扇の草子』の研究』(ぺりかん社)、『A BOOK OF FANS』(共著、Karolinum Prague)など。

。。。。。。。。。。。。。。

假名草子集成 第1巻
〔 〕内は角書。

秋寝覚(三巻、寛文九年序)
あくた物語(三巻、寛文六年刊)
浅井物語(六巻、寛文二年巻、ゑ入)
浅草物語(写本)
飛鳥川(三巻、慶安五年刊)
愛宕山物語(写本、寛永二十年)
あた物語(二巻、寛永十七年刊、ゑ入)
あつま物語(一巻、寛永十九年刊、ゑ入)
〔安倍〕晴明物語(六巻、寛文二年刊、ゑ入)
阿弥陀裸物語(二巻、明暦二年刊)

朝倉治彦編 昭和55年5月12日発行

。。。。。。。。。。。。。。。。

●朝倉治彦先生は、昭和55年(1980)5月、『仮名草子集成』第1巻をスタートさせた。文部省の助成出版であった。この8月に、私は『井関隆子日記』の中巻を出している。私は、朝倉先生から、第1巻以後、全巻を頂いている。本が出る度に先生とお会いして、長時間にわたって、お教えを頂いた。

●その後、10巻位のころから、編者に加えて頂き、仮名草子の校訂、諸本調査に打ち込んだ。朝倉先生と調査に出かけたことも何度もあった。

●昭和女子大学を定年の頃、この叢書の継承を依頼された。幸い、若い研究者の御協力を頂いて、何とか、先生の大事業を継承することができた。膨大な作品群を集成するという、朝倉先生の遺志は、今、1巻1巻、完結へと進められている。学問の世界は、素晴らしい、そのように思う。朝倉先生も、喜んでおられるものと思う。

●今回の、第62巻には、飯野朋美氏の『百八町記』の諸本に関する解題追加が掲載されて、私の不十分な調査結果の修正をして下さった。私は家庭の事情で、外出できず、止むを得ず複写物等で報告した。これを飯野氏が、各所蔵図書館の諸本を調査して下さった。これも、学問の世界の素晴らしい点である。

●私は、如儡子の研究を続けてきた。何故か『百八町記』が残ってしまった。その部分を飯野氏が補ってくれた。有難いことである。

〔相撲評論家之頁〕

〔相撲評論家之頁〕

  • 2019.10.07 Monday
〔相撲評論家之頁〕

●今日、すごいサイトに出会った。〔相撲評論家之頁〕という。膨大なデータである。私は、1481001人目の訪問者だった。〔史料庫〕という項に、相撲関係の内容の資料を集めていて、『可笑記評判』が収録されていた。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

可笑記評判
________________________________________

《可笑記評判巻第九》

第廿九 乱舞を好ミ過したる事

むかし
さる人の云るハ
古しへの侍ハ。十能七藝なと習ふ。と。いへども。今の侍ハ。それまでしらずとも。さのミ。くるしかるまし
されば。まづ。習ひしるべき事ハ。弓馬兵法手跡鉄炮しつけがた成へし。乱舞なと。知てわるきにハあらねども。此たぐひ。かならず。すき過して。それしやのやうに。なる物なり
一とせ。さるお大名。ことの外。能をすき好ミ給へバ。其家の諸侍。みな。よろひ甲。太刀かたな。弓鑓鉄炮馬くらなとを。うりすてゝ。太鼓つゞみ。うたひの本。色黒き尉のおもてなんどを。買あつめ。ひとへに。観世今春日吉大夫か成ぞこなひかと。かたはらいたくこそ有つれ

評曰
鳥けだもの虫 までも。分々に。したがひて一能一徳ハ。あるものなり
麒麟と鳳皇と龍と亀とハ。四霊の物とて。これらハ。天下太平。聖徳不窮の瑞兆を。しめす故に。申すに及バず。庭鳥にも五徳あり。つたなき蚯蚓までも。一つの口に五能を。そなへたり
増て人ハ。万物の長といはれて。すぐれたる生を。うけながら。一藝一能も。なからんハ。何を。とりえと。すべきや
されば。十能とハ 弓と鞠。庖丁。馬に仕付方。算。鷹。連歌。吹物に盤
又。七藝とハ 物かきて。音曲。太鼓。舞。相撲。口上。才智これぞ七藝
されども。古しへの人。十能七藝みな。そろへて。得たる人は。すくなくや。今の世に。猶なれなるへし
おなしく。藝能とハいひながら。さのミに。このまずとも。くるしかるまじきと。又。しらで。かなふまじき事あるへし。よく心得へし
能をこのミ給ひし大名の事。つくり物がたり成へし。家中の諸侍。武道具をうりて。能道具を買もとめたる事。大なる寓言也と。おぼゆ
しかれども。上の好むところ。下これに。したがふ理ハり。いましめ。つゝしまざらんや
________________________________________

史 料 庫
________________________________________

そういえば編者は(理系だが)大学院生であった。ということは手近に大きな図書館があったということである。 しかも、運のいいことに、他に近くに使いやすい図書館が二つもあった。せっかく史料が近くにあるのに打ち捨てておく手はなかろう…というわけで、 平成12年10月ごろから江戸時代までの史料を掻き集めにかかった。基本的に活字本に頼らざるを得ないとはいえ、整備が進んだ現今のこと、出る出る出る…。 ボツボツ入力も始めたものの、いつまでかかるやら。こんなわけで、何年経っても「建設中」の札は外せないだろうが、少しずつでも拡充していくつもりである。 年表は平安以前と鎌倉以後で二分しているが、その境目は通常と異なり、節会相撲廃絶の承安 4年(1174)までを「平安以前」、それ以降を「鎌倉以降」としているのでご留意願いたい。 下の大分類のどれかに収められているが、判断がつきにくい場合は解題から辿ることができる(但し書簡については解題に掲げない)。 漢字は原則として通用の字体で統一せんとしたが、「台」「臺」の如く統一すると区別が失われる場合は引用元の用法に従ったので、 結果として完全な統一は取れていない。引用元の凡例に「仮名に漢字を宛てた」旨記されていて、元の仮名表記が残っている場合は、 特に断りのない場合それに従って漢字を仮名に戻すが、片仮名を平仮名に変えたようなものについては戻さない。 なお段落冒頭の字下げや、敬意を示す字下げは、これを除いた。返り点や見せ消ちの類は省いてあり、挿図についても遺憾ながらその大部分を省かざるを得なかった。 詳細については引用元の書籍等を参照されたい。読めなかった字については■で示す。

________________________________________

入力了:人倫訓蒙図彙・職人尽発句合・難波職人歌合
・弘藩明治一統誌月令雑報摘要抄・野沢螢・浮世の有様
・我衣・反古のうらがき・諸式留帳・越中チョンガレ節(以上日本庶民生活史料集成)
・韃靼漂流記・津軽船朝鮮江陵漂着記・安南国漂流物語・亜墨新話
(以上石井研堂これくしよん江戸漂流記総集)
・徒目付後藤十次郎の咄の趣き・北槎異聞・一席夜話
(以上江戸漂流記総集別巻大黒屋光太夫史料集)
・和漢三才図会(吉川弘文館刊本)・初本結(勉誠社刊本)
・懐子・貞徳狂歌集(近世文学資料類従)
令和元年 5月25日更新
資料の不足により解題未済の書物がある。こちら。
________________________________________

仮名草子調査済作品

仮名草子調査済作品

  • 2019.09.03 Tuesday
仮名草子調査済作品

1 『可笑記』
2 『可笑記評判』
3 『浮世物語』 付、『明心宝鑑』
4 『女仁義物語』
5 『女式目』『儒仏物語』
6 『怪談全書』『恠談』『怪談録』『奇異怪談抄』『怪談録前集』『幽霊之事』
7 『奇異雑談集』
8 『仮枕』
9 『鑑草』
10 『江戸雀』
11 『堪忍記』(如儡子)
12 『百八町記』
13 『かさぬ草紙』
14 『かなめいし』
15 『枯杭集』
16 『鎌倉物語』
17 『葛城物語』
18 『堪忍弁義抄』(同写本)
19 『きくわく物語』
20 『きくのまへ』
21 『勧孝記』
22 『若輩抄』
23 『女訓抄』
。。。。。。。。。。。。。。。。

◆仮名草子(かなぞうし) (『日本古典籍書誌学辞典』一九九九年三月一〇日、岩波書店発行)

「仮名草子 かなぞうし 〈分類〉
近世初期、慶長(一五九六―一六一五)から天和(一六八一―八四)にかけての、約八十年間に作られた、小説を中心とする散文文芸の総称。この近世初期は、日本歴史の中でも代表的な啓蒙期であり、この時期に、漢字(振り仮名付き)交じり仮名書きの、通俗平易な読み物が次々と作られた。これら一群の文学的著作に与えられたのが「仮名草子」という名称で、その数は三百点にも達する。原本は、写本または版本(古活字本・整版本)として伝存するが、出版の黎明期にふさわしく、全体に版式もおおらかで、大きな本が多い。仮名草子は次の如く分類し得る。①啓蒙教訓的なもの(教義問答的なもの、随筆的なもの、女性教訓書、説話集的なもの、翻訳物)、②娯楽的なもの(中世風な物語、説話集的なもの、翻訳物、擬物語)、③実用本位のもの(見聞記的なもの、名所記的なもの、評判記的なもの)(野田寿雄説)。この分類からもわかる通り、仮名草子は複合ジャンルの如き性質をもっている。文学史的には、お伽草子→仮名草子→浮世草子と接続するが、これを小説の系列として考えるならば、小説以外の作品をどう扱うべきか、という問題が今後の課題として残されている。              (深沢秋男)
【参考文献】坪内逍遥・水谷不倒『近世列伝躰小説史』春陽堂、明治30年。水谷弓彦『仮名草子』水谷文庫、大正8年。水谷不倒『新撰列伝体小説史』前編、春陽堂、昭和7年。野田寿雄『日本近世小説史 仮名草子編』勉誠社、昭和61年。近世文学資料類従・仮名草子編・古板地誌編全61冊、勉誠社、昭和47―56年。仮名草子集成1―21、東京堂出版、昭和55―平成10年。野田寿雄校注『仮名草子集』上・下、日本古典全書、朝日新聞社、昭和35・37年。前田金五郎・森田武校注『仮名草子集』日本古典文学大系90、岩波書店、昭和40年。青山忠一・岸得蔵・神保五弥・谷脇理史校注『仮名草子集 浮世草子集』日本古典文学全集37、小学館、昭和46年。渡辺守邦・渡辺憲司校注『仮名草子集』新日本古典文学大系74、岩波書店、平成3年。深沢秋男・小川武彦・菊池真一「仮名草子研究文献目録(明治―平成)」菊池真一『恨の介 薄雪物語』和泉書院、平成4年。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

◆仮名草子の範囲と分類  (早稲田大学蔵 資料影印叢書 国書篇 第39巻
仮名草子集 月報43、平成6年9月15日、早稲田大学出版部発行)

水谷不倒氏が「仮名草子」と命名してから既に百年が経過しようとしている。研究の進展と共に作品の数も次第に増加して、現在では、三百点に達する勢いであるが、これには、昭和四十七年完結の『国書総目録』が大いに与って力があったものと思われる。
この間、「仮名草子」という名称に対する検討や批判もあり、作品群の分類に関しても様々な意見が提出されて今日に及んでいる。
これは、現在、仮名草子として扱われる作品が、当時の書籍目録(寛文十年版)を見ると、「仮名仏書」「軍書」「仮名和書」「歌書 并 物語」「女書」「名所尽 道之記」「狂歌」「咄之本」「舞 并 草紙」等の各条に散在している事からも解るように、この名称が、いわゆる文学ジャンルとしての命名でなかった事と関連している。強いて言えば、複合ジャンルの如き性質をもっており、この事が、仮名草子の範囲や分類を複雑にしているように思う。
仮名草子の範囲を考える場合、留意すべき事項について、今、思いつくままに、列挙してみると以下の如くである。
①御伽草子との関連。
②浮世草子との関連。
③評判記(遊女・役者)との関連。
④軍書、軍学書との関連。
⑤咄本との関連。
⑥随筆的著作との関連。
⑦名所記、地誌、紀行との関連。
⑧教訓書、女性教訓書との関連。
⑨仮名仏書、仮名儒書との関連。
⑩注釈書(……抄)との関連。
⑪翻訳物、翻案物との関連。
これらの、各項目を具体的に検討してゆく時、各項相互の間に、出入りがあったり、この他に加えるべき項目があるかも知れない。
①の御伽草子との関連は、いわゆる上限の問題であるが、時期は、徳川開幕以後とし、それに、中世との過渡期としての、安土・桃山時代を含めて、一応考えておきたい。この項で注意したいのは、寛文頃の刊と推測される、渋川版の御伽草子を仮名草子に入れるという説のあることである。確かにこの一群の御伽草子は、近世初期に出版されることによって、より多くの読者に仮名草子と同時的に享受されたものであろう。また、写本→版本の過程で、異同も生じているであろう。しかし、文学作品の史的定着は、あくまで、その内容と成立時期によって評価し、位置づけるべきものと思う。これらの御伽草子は、中世的世界観の下で創られたものであり、これを近世の作品とするのは妥当と思われない。なお、写本を除外するが如き考えが一部に見られることであるが、これも、写本であると刊本であるとに関わりなく、この近世初期に創られた作品全てを対象とすべきものと思う。
②の浮世草子との関連は、下限の問題で、天和二年の西鶴の『一代男』の刊行を一つの目安にする事に異論はないようである。その場合も、仮名草子と一線を画する、浮世草子の新しい特色、傾向についても検討して、いずれに属するかを判断すべきものと思う。
③から⑥は、中世の御伽草子系統の、小説的な作品(草紙)とは、やや異なる、娯楽的、教訓的、実用的な作品群との関連である。これらの諸作品を仮名草子に入れるか否か判断する場合、まず、その文芸性が問われなければならないだろう。これについては、今後、一作一作、具体的に分析して、それぞれの作品の評価を判定する必要がある。
また、仮名草子は、小説的作品に限定すべきであるとしたり、さらに、小説に限定して、「近世初期小説」の用語を採用する、という意見も出されている。御伽草子→仮名草子→浮世草子と、これらを小説の系列として考える時、一応もっともな意見であると思う。しかし、そのように仮名草子を狭義に解し、他の作品を除くことは、研究史的観点から見て、時機尚早であると考える。現在、仮名草子とされている諸作品の具体的な調査、分析、評価等が十分になされているとは思えないからである。かつて、価値の低い作品は採り上げず、その事によって一つの評価を示す、という風潮があった。しかし、文学研究が科学である以上、そのような態度は、もはや、許されないであろう。一つ一つの作品の諸本調査と本文批評を行い、信頼すべき本文を確定し、それに基づいて、作品分析を行い、その属すべきジャンルを定め、文学的評価を出して、妥当な位置づけを行うべきである。
「仮名草子」という名称も、いずれは、その内容を整理し、物語、説話、随筆、紀行、評論等々に分離して、後続文学への展開をも視野に入れながら、改められる事になるかも知れない。ただ、今は、まだその時機ではないと思う。
仮名草子の分類に関しても、すでに多くの説が出されている。「いたずらに博捜を事として、書目の多きを誇り、分類・解説に憂き身をやつ」す、と厳しい批判もあったが、先学の分類の諸説は、仮名草子の実態を知る上で、非常に有益であった。
3種、3種13類、3種16類、5種9類、5種16類、6種、7種11類、8種、10種と、それらは、実に様々であるが、それだけ仮名草子の内容が、種々雑多で複雑であることを示している。私には、先学の諸説に対して、別の分類を提出する準備も力量も、現在のところは無い。ただ、分類の第一の基準は、やはり、ジャンルによるべきものと考える。
『分類の発想』の著者、中尾佐肋氏は、分類の精神を示すキーワードは、枚挙・網羅・水平思考であると言っている。現時点での仮名草子の研究は、依然として、未だ研究されていない作品を俎上に載せることであり、より多くの作品を見渡して、これらに通用する基準で分類することにあると思う。
「仮名草子」に該当する作品は、これをことごとく集成し、一作一作、研究を進めることが当面の目標であり、これらを分解、再編する作業は、次の世代の研究者に委ねることになるかも知れない。 (深沢秋男)」

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

私の書誌的調査の方法

〔一〕所蔵者=所蔵の図書館名・文庫名・個人名等を記し、整理番号・記号、請求番号・記号等を記す。
また、この項に、閲覧・調査した年月日を明記した。
〔二〕体 裁=大本・半紙本・中本・横本等、巻、冊、袋綴等。
〔三〕表 紙=寸法、色、模様、空押模様、原表紙・後補表紙等。
寸法は全てミリを単位とする。原則として、縦はノド、横は天で測った。表紙の色は、色見本帳を参照した。
表紙の空押模様などには、卍つなぎ・毘沙門格子・唐草模様など様々なものがあるが、調査を始めた頃は、
経験不足のため、不明のものもあり、ノートには記録したが、発表段階で「空押模様」と略記した場合もある。
〔四〕題 簽=寸法、左肩・左上・中央上部等の位置、子持枠・双辺・単辺・無界等の枠の種類、原題簽・後補題簽・
書題簽、題簽題。
〔五〕序題・内題・目録題・尾題。
〔六〕匡 郭=四周単辺・無界(匡郭無し)、寸法(計測の位置は、序・目録・本文の1丁目とし、縦は1行目と2行
目の間、横は1字目と2字目の間で、匡郭の外側から外側までを測る。
〔七〕柱 刻(版心)=黒口・白口・線黒口・大黒口・細黒口、魚尾・花紋等、丁付、飛丁・又丁等。
〔八〕丁 数=巻一…O丁(内、序1丁、目録1丁)、巻五…〇丁(内、跋、2丁)、合計…O丁。飛丁・又丁。
〔九〕行 数=序、毎半葉O行、本文、毎半葉〇行。
〔十〕字 数=序一行約〇字、本文一行約O字。5丁~10丁を数えて平均を出す。
〔十一〕章段数=巻一…〇段、巻一…〇話など。
〔十二〕本 文=漢字交り平仮名・漢字交り片仮名・振り仮名・濁点・句読点(「、」「。」「.」「混在」「無し」
など)。
〔十三〕挿 絵=O丁表、O丁裏、〇丁裏・O丁表見開き、合計O図、内、開きO丁。
〔十四〕奥書、序・跋=〇巻〇丁裏、本文に続けて「……」
〔十五〕刊 記=〇巻〇丁裏、奥書に続けて「……」
〔十六〕蔵書印・書入れ=陽刻方形朱印・陰刻・縦長方形・円形・スタンプ・ラベル・朱筆・墨筆……。
〔十七〕その他=落丁・乱丁・破損・磨損・補修(裏打ち)。
〔十八〕他の諸本との関連=刊行の先後・刷の先後・覆刻・求版……。

私の仮名草子作品の諸本調査は、学生時代から始まっている。従って経験不足の状態で調査したものもあり、今、振り返ってみると、精粗の差もあり、調査基準にも変更がある。先学の御指導によって、多くの事を学んだが、反省点も少なくは無い。思いつくままに、留意点を列挙してみる。

◎調査図書館の順序……資料の所在確認には、岩波書店の『国書総
目録』が、非常に役立った。心から感謝している。仮名草子の諸
本調査をする場合の手順として、まず、国会図書館・都立日比谷
図書館などから始め、都内の大学図書館を閲覧した。法政大学図
書館には和本が皆無の状況だったので、学生時代から早稲田大学
図書館のお世話になった。三か月間の利用証をもらって、連日通
った。貴重書室の中沢氏には、早稲田の学生のように、貴重な御
指導を頂いた。次に、京都・大阪・仙台などの大学図書館・公共
図書館と進め、次に特殊図書館、個人所蔵へと進めた。手近な図
書館で、その本の特徴を把握して、地方の図書館の調査をすれば、
効果的であった。

◎同時調査の点数……仮名草子の諸本調査であるから、同時に、い
くつかの作品の調査をすれば、効果的のように思う。特に地方の
図書館の場合、時間的にも経費の点でも、その方が助かるのは確
かである。しかし、より正確な結果を求める時、不安になる。私
は、原則として、一作品に限定して調査した。効率よりも正確性
を求めたのである。同時に調査するのは、せいぜい二作品か三作
品までとした。当初は東京発の夜行の寝台特急を利用して、ホテ
ル代を節約した。その後、新幹線、飛行機が充実して、大いに助
かった。リニア新幹線が開発されれば、もっと便利になるだろう。
また、現在では、国文学研究資料館や各図書館等が、画像公開し
ていて、非常に便利になった。これらは、大いに活用すべきであ
るが、調査は、現物調査が原則である。画像の場合、不明な点が
多く、この点は注意すべきだと思う。

◎版か板か……寛永十九年版・山本五兵衛版・かぶせ版など使用さ
れるが、原本では「版」「板」などが使用されている。古活字版・整
版・木活字版などがあるので、私は「版」で統一している。「板」を
使っている人もあるが、古活字・木活字・銅活字・整版等の事を
考慮すると、「版」で統一した方が良いのではないかと考えた。

◎法の単位、センチ・糎・ミリ……一般に、糎・センチと表記して
いるが、私は最初からミリを採用している。五センチ五ミリを「五・
五センチ」と表記するよりも「五五ミリ」と表記する方が「・」が不要
で便利であるし、「五五・五ミリ」とミリの下の位の表記も簡単で
ある。

◎匡郭の寸法は内法か外側か・計測の位置……一般に、匡郭の内法
(内側から内側)で測ることも多いが、私は調査開始当時から、
外側から外側で測って統一している。版木の磨滅を理由に内法で
測るようであるが、内法で計測した場合は、版面全てが記録でき
ない。また、計測位置は、縦は1行目と2行目の間、横は1字目
と2字目の間を原則とした。巻一1丁表の様に、計測位置を決め
て計測しないと、かぶせ版などの寸法比較の判断が出来ない。

◎本文用紙の種類……本文用紙が、楮紙・麻紙等の記録は、同じ版
の刷の先後や版元を判断する上で非常に参考になる。紙を漉いた
時のすだれの糸の間隔などに注意した事もあった。しかし、私は
調査し始めた頃に用紙に関して注意していなかった関係で、これ
については、ノートのメモに留め、公表の書誌には記さなかった。
反省点のひとつである。

◎表紙などの色……藍色・紺色・青色・黒色・茶色・縹色・渋引き
など、様々な色の表紙がある。私は、色見本を持参して判断した。

◎表紙の空押し模様……卍繋ぎ・牡丹唐草・毘沙門格子など、様々
な模様がある。模様不確定の場合は「空押し模様あり」とした。

◎かぶせ版・覆刻版……『可笑記』や『女仁義物語』『鑑草』の諸
本を調べていると、この覆刻版の版木作製の方法に関して疑問が
生じた。従来、覆刻版は、既に刊行された本を解体して版下に使
用する、と言われていた。その方法では生じない現象が見られた
からである。元版を雁皮紙などの薄い紙で透き写しして、版下を
作る方法もあったのでないかと推測した。この点に関して、書誌
学辞典や解説書を整理しておきたい。

① 『日本書誌学用語辞典』川瀬一馬、一九八二年、雄松堂出版
「被(かぶせ)彫(ぼり) 版本を再版する場合、もとの摺本を新版の版木に張り付けて版下(はんした)として、そっくり原のまゝに彫版すること。覆(ふく)刻(こく)。」
② 『日本古典書誌学総説』藤井隆、一九九一年、和泉書院
「覆刻本(フッコクボン) 覆刊本(フッカンボン) 刊本を底本として模して再製刻した覆製本である。基とする版本を解体して一枚ずつにし、裏返して版木に貼って上から彫るので「被(カブセ)彫(ボリ)」という。」
③ 『日本書誌学を学ぶ人のために』廣庭基介・長友千代治、一九九八年、世界思想社
「覆刻版(ふっこくばん)(かぶせ彫) 覆刻版は、整版本または活字本を敷写(しきうつ)し(謄写)して、版下(はんした)に使い、整版本にしたものをいう。」
④ 『和本入門』橋口侯之介、二〇〇五年、平凡社
「……このように中国の本をもとにして作ることを翻刻(ほんこく)というが、とくに原本をそのまま板木に貼って彫る「かぶせ彫り」で作製した本は覆刻(ふっこく)という。……」
⑤ 『続和本入門』橋口侯之介、二〇〇七年、平凡社
「再板・重板で板木を彫りなおすときは、ふつう元の本を板下として利用する。それを板木に貼って用いるので「かぶせ彫り」というが、「敷(し)き写(うつ)し」といって、薄葉を上にあてて元の本をなぞって写していく方法(影(えい)写(しゃ))もあった。」

これらの解説の中では、⑤の橋口侯之介氏の説が妥当の様に思う。
●この覆刻版に関して、面白い思い出がある。昭和四十三年六月、
日本近世文学会春季大会で、私は、『可笑記』の諸本に関して発
表した。発表が終わり、質疑応答で、田中伸氏から反論が出され
た。寛永十九年版十一行本と十二行本の先後に関するものである。
私は、十一行行本が先という説であったが、田中氏は、十二行本
が先であると反論された。私の説明が要領を得なかったので、な
かなか納得してもらえなかった。司会の神保五弥氏から、時間が
無いので、あとは二人で話し合って下さい、と打ち切られてしま
った。昼休みに、田中氏が来て下さったので、参考資料を示して
説明申し上げ、ようやく了解して下さった。そんな事もあった。

◎刷の先後の判定……同じ版木で印刷されている場合、その先後を
判断するのは、一見、鮮明でシャープな印刷面のものは刷りが早
いものと判断できるが、これでは、感覚的な要素もあるので、私
は、印刷面の欠損箇所を比較して判断している。

◎調査年月日……調査年月日は必ず記録する。再度調査した場合は
再調査年月日、何度も調査した場合、最終調査年月日を明記した。
諸本調査の場合、調査年月日を明記しておくことで、以後焼失・
破損、譲渡などの対応に便利である。殊に個人などの場合は、以
後に売却したり、大学図書館などに移管されることもあるので、
記録しておけば参考になる。

◎物差……竹・ステンレス・布メジャー。「㎝」と刻印のあるもの。

◎複写台・カメラ……ニコン複写台。カメラは、ニコンF・ニコン
F801・ニコンF5・ニコンF6・ニコンD100・ニコンD30
0。レンズは、マイクロニッコール55ミリ・AFマイクロニッ
コール60ミリ・AF‐Sニッコール24~85ミリ他。原本の複写
では、初期の頃は露出に苦労した。大東急記念文庫・都立日比谷
図書館などでは失敗し、再度複写願いを出したこともあった。

三、調査済作品

これまで、私が調査した仮名草子作品のリストをメモしておきたいと思う。これらを『仮名草子の書誌的研究』として刊行したいと思っていたが、老齢となり、多分不可能だと思う。調査済みリストだけでも報告しておきたい。

【1】『可笑記』

一、 寛永十九年版十一行本

〔1〕 大阪女子大学図書館
〔2〕 小川武彦氏
〔3〕 香川大学図書館・神原文庫
〔4〕 九州大学国語学国文学研究室
〔5〕 京都大学図書館
〔6〕 京都大学文学部
〔7〕 国立公文書館・内閣文庫
〔8〕 後藤憲二氏
〔9〕 大東急記念文庫
〔10〕 東京大学教養学部第一研究室
〔11〕 東京大学図書館
〔12〕 平井隆太郎氏(平井太郎〈江戸川乱歩〉氏旧蔵)
〔13〕 横山重氏・赤木文庫
〔14〕 龍谷大学図書館
〔15〕 龍門文庫
〔16〕 早稲田大学図書館
〔17〕 渡辺守邦氏
〔18〕 鹿島則幸氏旧蔵・桜山文庫(昭和女子大学図書館現蔵)
〔19〕 深沢秋男 (現在、某氏に寄託、所在未詳)
〔20〕 ケンブリッヂ大学図書館・アストンコレクション(未見)
〔21〕 台湾大学図書館(未見)
〔22〕 岐阜県立図書館(未見)

二、 寛永十九年版十二行本

〔1〕 九州大学国語学国文学研究室
〔2〕 国立国会図書館
〔3〕 神宮文庫
〔4〕 日本大学図書館・武笠文庫
〔5〕 会津若松市立図書館(未見)

三、 無 刊 記 本

〔1〕 お茶の水図書館・成簣堂文庫・Ⅰ
〔2〕 お茶の水図書館・成簣堂文庫・Ⅱ
〔3〕 香川大学図書館・神原文庫
〔4〕 学習院大学国語国文学研究室
〔5〕 関西大学図書館
〔6〕 京都大学図書館・潁原文庫・Ⅰ
〔7〕 京都大学図書館・潁原文庫・Ⅱ
〔8〕 慶応大学図書館
〔9〕 国学院大学図書館
〔10〕 国文学研究資料館
〔11〕 実践女子大学図書館・黒川真頼・黒川真道蔵書
〔12〕 天理図書館
〔13〕 東京国立博物館
〔14〕 東北大学図書館・狩野文庫
〔15〕 名古屋大学国文学研究室
〔16〕 西尾市立図書館・岩瀬文庫
〔17〕 山岸徳平氏
〔18〕 龍門文庫
〔19〕 早稲田大学図書館
〔20〕 長澤規矩也氏旧蔵(昭和女子大学図書館現蔵)
〔21〕 大倉精神文化研究所附属図書館(未見)
〔22〕 岐阜大学図書館(未見)

四、万治二年版絵入本

〔1〕 秋田県立図書館
〔2〕 上田市立図書館・藤廬文庫
〔3〕 小川武彦氏
〔4〕 お茶の水図書館・成簣堂文庫
〔5〕 香川大学図書館・神原文庫
〔6〕 学習院大学国語国文学研究室・Ⅰ
〔7〕 学習院大学国語国文学研究室・Ⅱ
〔8〕 京都府立総合資料館
〔9〕 慶応大学図書館
〔10〕 国立国会図書館・Ⅰ
〔11〕 国立国会図書館・Ⅱ
〔12〕 佐賀大学図書館・小城鍋島文庫
〔13〕 鶴岡市立図書館
〔14〕 天理図書館
〔15〕 東京国立博物館
〔16〕 東京大学図書館・青州文庫
〔17〕 東北大学図書館・狩野文庫
〔18〕 東洋文庫・岩崎文庫
〔19〕 都立中央図書館・加賀文庫
〔20〕 中野三敏氏
〔21〕 山口大学図書館・棲息堂文庫
〔22〕 龍門文庫
〔23〕 早稲田大学図書館
〔24〕 横山重氏旧蔵・赤木文庫(昭和女子大学図書館現蔵)
〔25〕 カリフォルニア大学・東亜図書館(未見)
〔26〕 大英博物館・図書館(未見)
〔27〕 青森県立図書館(未見)

五、 その他(取合本、写本)

〔1〕 大阪府立中之島図書館
〔2〕 学習院大学国語国文学研究室
〔3〕 天理図書館
〔4〕 早稲田大学図書館
〔5〕 渡辺守邦氏
〔6〕 東京大学国語国文学研究室
〔7〕 甲南女子大学図書館
〔8〕 深沢秋男
●詳細は、①『近世初期文芸』12号(平成7年12月)、②同21号(平成16年12月)、③同35号(平成30年12月)参照。④「『可笑記』の本文批評」『近世初期文芸』1号(昭和44年12月)。

【2】『可笑記評判』

〔1〕赤木文庫(横山重氏)所蔵本(現在所在未詳)
〔2〕京都大学附属図書館所蔵本
〔3〕国立国会図書館所蔵本
〔4〕東京大学附属図書館所蔵本
〔5〕名古屋大学附属図書館所蔵本
〔6〕竜門文庫所蔵本
〔7〕早稲田大学図書館所蔵本
〔8〕 深沢秋男旧蔵本(現在所在未詳)

●詳細は、①『可笑記評判』(昭和45年12月25日、近世初期文芸研究会発行)、②『可笑記評判』上・中・下(近世文学資料類従・仮名草子編・21・22・23、昭和52年3月25日、勉誠社発行)、③『可笑記評判』(『浅井了意全集・仮名草子編 3』、平成23年5月、岩田書院発行)。

【3】『浮世物語』

一、十一行本

1 無刊記本
〔1〕京都大学文学部国語学国文学専修研究室所蔵本
2 京都 平野屋版
〔1〕都立中央図書館・東京誌料所蔵本
〔2〕都立中央図書館・特別買上文庫所蔵本
〔3〕吉田幸一氏所蔵本
3 京都 風月堂版
〔1〕赤木文庫・横山重氏旧蔵本(現在所在未詳)
4 京都 尚書堂版(広島大学附属図書館所蔵本)(未見)
5 延宝九年版(伝存未詳)

二、十四行本

1 江戸 松会版 (『浮世ばなし』と改題
〔1〕中京大学図書館所蔵本(赤木文庫旧蔵)
〔2〕吉田幸一氏所蔵本
2 大阪 丹波屋・田原屋版
〔1〕京都大学文学部国語学国文学専修研究室所蔵本
〔2〕東京大学附属図書館所蔵本
3 大阪 定栄堂版 (『続可笑記』と改題、
〔1〕国会図書館所蔵本
〔2〕天理図書館所蔵本
〔3〕筑波大学図書館所蔵本
〔4〕柳沢昌紀氏所蔵本  (未見)

三、写本

〔1〕国会図書館所蔵本
2 改題本『いかだ船』 (伝存未詳)
●詳細は、①『浮世ばなし 付・明心宝鑑』(近世文学資料類従、
仮名草子編12、昭和47年8月20日発行)。②『浅井了意全集 仮名草子編1』(平成19年8月、岩田書院発行)。

付 『明心宝鑑』

『明心宝鑑』の諸本については、すでに前田金五郎氏、及び、LGクノート、白石晶子両氏の調査がある。その後、私の調査し得たものを加えて整理すると次の通りである。

{、明心宝鑑 ファン=コーボ使用の写本
上智大学・キリシタン文庫(複製本)
二、明心宝鑑正文 明版
内閣文庫
三、明心宝鑑定本 明版
尊経閣文庫
四、明心宝鑑 清版
松平文庫
五、新校明心宝鑑正文 清版
日比谷図書館・加賀文庫
六、新刻全本明心正文 清版か
国会図書館
七、明心宝鑑抄 朝鮮版
京都大学図書館・谷村文庫
東洋文庫 早稲田大学図書館
八、明心宝鑑正文 和刻本 寛永八年版
お茶の水図書館・成簣堂文庫
香川大学図書館・神原文庫
関西大学図書館・泊園文庫
京都大学図書館
伊達文庫
東北大学図書館・狩野文庫
内閣文庫
長澤規矩也氏
前田金五郎氏
松平文庫
龍谷大学図書館
九、イスパニア語版
Beng Sim Po Cam ファン=コーボ訳(一五九二年)
上智大学・キリシタン文庫(複製本)
Ming Sim Pao Kien フェルナンデス=デ=ナヴァレテ訳
(一六七六年)
東洋文庫
●詳細は、①『浮世ばなし 付・明心宝鑑』(近世文学資料類従 仮名草子編12、昭和47年8月20日、勉誠社発行)、②『浅井了意全集 仮名草子編1』(平成19年8月、岩田書院)

【4】『女仁義物語』

十三行本
万治二年山本九兵衛版
〔1〕大東急記念文庫蔵本
〔2〕筑波大学附属図書館蔵本
万治二年井上平兵衛版
〔1〕東洋文庫(岩崎文庫)蔵本
〔2〕京都大学文学部国語学国文学専修研究室蔵本
無刊記本
〔1〕お茶の水図書館(成簣堂文庫)蔵本

十四行本
無刊記本
〔1〕慶応義塾大学図書館蔵本
〔2〕国立公文書館(内閣文庫)蔵本
〔3〕国立国会図書館蔵本
〔4〕東京大学総合図書館(霞亭文庫)蔵本
寛文四年松会衛版
〔1〕東京国立博物館蔵本
無刊記松会衛版
〔1〕国立国会図書館蔵本
〔2〕早稲田大学図書館蔵本
▲天理図書館蔵本

十六行本
延宝二年亀屋版
〔1〕慶応義塾大学図書館蔵本
注 ▲印の天理図書館蔵本は、諸種の事情で未見であるが、
青山忠一氏の調査に従って組み入れた。
●詳細は、『近世初期文芸』8号(平成3年12月)。

【5】『女式目』『儒仏物語』

『女式目』

無刊記本
〔1〕東京大学総合図書館蔵本・Ⅱ
〔2〕東京大学総合図書館蔵本・Ⅰ
〔3〕お茶の水図書館(成簣堂文庫)蔵本
〔4〕香川大学附属図書館(神原文庫)蔵本
〔5〕京都大学法学部図書室蔵本(整理記号番号なし)
〔6〕宮内庁書陵部蔵本
〔7〕謙堂文庫(石川松太郎氏)蔵本

寛延四年版
〔1〕京都府立総合資料館蔵本
〔2〕徳島県立図書館(森文庫)蔵本

写本
〔1〕早稲田大学図書館蔵本

女式目(『本朝女鑑』再編本)
〔1〕国立国会図書館蔵本

儒仏物語
〔1〕東京大学総合図書館蔵本

一、無刊記本について
二、寛延四年版について
三、無刊記本と『儒仏物語』について
四、『本朝女鑑』再編本『女式目』について
五、複製本・翻刻本について
●詳細は、『近世初期文芸』9号(平成4年12月)。

【6】『怪談全書』『恠談』『怪談録』『奇異怪談抄』『怪談録前集』『幽霊之事』

一、『怪談全書』の諸本
〔一〕、元禄十一年版・Ⅰ
① 大阪府立中之島図書館蔵本
② 都立中央図書館・加賀文庫蔵本
学習院大学日本語日本文学研究室蔵・B本
③ 京都大学附属図書館蔵本
東洋大学附属図書館・哲学堂文庫蔵本
〔二〕、元禄十一年版・Ⅱ
学習院大学日本語日本文学研究室蔵・A本
国立国会図書館蔵本
長澤孝三氏蔵本(長澤規矩也氏旧蔵)
早稲田大学図書館蔵本
〔三〕、享保六年版『異朝怪談故事』(改題、求版本)
都立中央図書館・特別買上文庫蔵本
香川大学附属図書館・神原文庫蔵本
〔四〕、寛保二年版『怪談全書』(改題、求版本)
宮内庁書陵部蔵本
〔五〕、無刊記本『怪談全書』
国文学研究資料館蔵本
龍谷大学大宮図書館蔵本

二、『恠談』の諸本
〔一〕、島原市立図書館・松平文庫本(片仮名本)
〔二〕、長澤孝三氏所蔵本(平仮名本)
〔三〕、東洋大学附属図書館・哲学堂文庫本(平仮名本)

三、『怪談録』の諸本
①、長澤孝三氏蔵本(長澤規矩也氏旧蔵)
②、東洋大学附属図書館・哲学堂文庫本

四、『奇異怪談抄』の諸本
天理図書館蔵本

五、『怪談録前集』の諸本
天理図書館蔵本

六、収録順序一覧と諸本系統図
●詳細は『近世初期文芸』10号(平成5年12月)。

【7】『奇異雑談抄』

写 本
〔一〕、吉田幸一氏蔵本
〔二〕、無窮会平沼文庫本
〔三〕、島原松平文庫本

刊 本
〔一〕、天理図書館蔵本
〔二〕、国会図書館蔵本
〔三〕、早稲田大学図書館蔵本
●『仮名草子集成 21』(平成10年3月20日)。ここでは、『集成』の基準によって記載。詳細はノートにあるが未発表。

【8】『仮枕』

〔一〕、島原市立図書館・松平文庫蔵本
●『仮名草子集成 21』(平成10年3月20日)。ここでは『集成』の基準によって記載。詳細はノートにあるが未発表。

【9】『鑑草』

■正保四年版系統
一、 正保四年風月宗知版
〔1〕中江藤樹記念館蔵・A本
〔2〕謙堂文庫(石川謙氏旧蔵・石川松太郎氏蔵)蔵本
〔3〕筑波大学図書館蔵本
〔4〕東京大学図書館蔵・A本
〔5〕東京大学図書館蔵・B本
〔6〕中江藤樹記念館蔵・B本
▲初智艸堂文庫本(田中初太郎氏蔵)未見

二、万治二年伊吹権兵衛求版
〔1〕中江藤樹記念館蔵・A本
〔2〕中江藤樹記念館蔵・B本
〔3〕中江藤樹記念館蔵・C本

三、寛文九年西沢太兵衛求版
〔1〕国会図書館蔵本
▲岐阜市立図書館蔵本 未見

四、天明元年尾張屋勘兵衛求版
〔1〕東京大学図書館蔵本
〔2〕早稲田大学図書館蔵本

五、無刊記版
〔1〕中江藤樹記念館蔵本
〔2〕京都大学図書館蔵本
〔3〕国会図書館蔵本
〔4〕佐賀大学図書館小城鍋島文庫本
〔5〕都立中央図書館・井上文庫本
〔6〕都立中央図書館・東京誌料本
〔7〕福島県立図書館蔵本

六、寛政元年松村九兵衛等求版
〔1〕国会図書館蔵本

■延宝三年版絵入本系統
一、延宝三年福森・村田版
〔1〕京都大学図書館蔵本
〔2〕お茶の水図書館・成簣堂文庫本
〔3〕国文学研究資料館蔵本
〔4〕中江藤樹記念館蔵本

二、無刊年記福森・村田版
〔1〕大阪女子大学図書館蔵本
〔2〕香川大学図書館・神原文庫本

三、無刊記植村求版
〔1〕金沢大学図書館蔵本

四、無刊記版
〔1〕学習院大学図書館蔵本
▲岐阜市立図書館蔵本 未見

五、 その他
〔1〕京都大学文学部蔵本
〔2〕中江藤樹記念館蔵・A本
〔3〕中江藤樹記念館蔵・B本
〔4〕中江藤樹記念館蔵・C本

◎写本
〔1〕静嘉堂文庫蔵本
●詳細は『近世初期文芸』11号(平成6年12月)

【10】『江戸雀』

一、初印本
〔1〕 赤木文庫(横山重氏)蔵本・Ⅰ

二、後印本・1
〔1〕 東洋文庫・岩崎文庫蔵本・Ⅰ

三、 後印本・2
〔1〕 赤木文庫(横山重氏)蔵本・Ⅱ
〔2〕 京都大学附属図書館蔵本
〔3〕 国立公文書館・内閣文庫蔵本
〔4〕 国立国会図書館蔵本
〔5〕 静嘉堂文庫蔵本
〔6〕 天理図書館蔵本
〔7〕 東京教育大学附属図書館蔵本
〔8〕 都立中央図書館・加賀文庫蔵本
〔9〕 東洋文庫。岩崎文庫蔵本・Ⅱ

四、 写本
〔1〕東京大学附属図書館・南葵文庫蔵本
〔2〕都立中央図書館・東京誌料蔵本
〔3〕東北大学附属図書館・狩野文庫蔵本
〔4〕西尾市立図書館・岩瀬文庫蔵本
●詳細は『江戸雀』(近世文学資料類従・古板地誌編9、昭和50年11月23日)

【11】 『堪忍記』(如儡子)

〔1〕 福井県立図書館・松平文庫蔵本
〔2〕 国立公文書館・内閣文庫・和学講談所本
〔3〕 国立公文書館・内閣文庫・昌平坂学問所本
●詳細は『近世初期文芸』6号(平成元年10月31日)、同7号(平成2年12月20日)、『芸文稿』8号(平成27年7月1日)、同9号(平成28年7月1日)。

【12】『百八町記』

一、無刊記本
〔1〕酒田市立図書館・光丘文庫本
〔2〕京都大学附属図書館・潁原文庫本(複写物により確認)
〔3〕国文学研究資料館本(複写物により確認)
〔4〕国会図書館本(複写物により確認)
〔5〕東京大学図書館本(複写物により確認)
〔6〕宮城県図書館・青柳館文庫本(複写物により確認)

二、寛文四年五月、中野道伴版
〔1〕佐賀大学附属図書館・小城鍋島文庫本
〔2〕都立中央図書館・東京誌料文庫本(複写物により確認)
〔3〕広島大学図書館本(複写物により確認)
〔4〕早稲田大学図書館本(インターネットにより確認)
〔5〕台湾大学図書館本(仮名草子選集に拠る)

三、刊年未詳、中川茂兵衛・中川弥兵衛版
〔1〕京都大学吉田南総合図書館本(複写物により確認)

四、寛文四年、銭屋三良兵衛版(儒仏二教水波問答)
〔1〕京都大学附属図書館・潁原文庫本(複写物により確認)

▲未確認本
小平市立図書館・久下文庫本(国文研のデータベース) 無刊記本
天理図書館(仮名草子零本雑集)本、巻一(天理目録) 無刊記本
バークレー・三井文庫本(国文研のデータペース)   無刊記本
秋田県立図書館本(秋田県立目録)           中野版
天理図書館(仮名草子零本雑集)本巻三~巻五(天理目録)中野版
天理図書館(仮名草子零本雑集)本巻四欠(天理目録)  中野版
バークレー・東亜細亜図書館本(国文研のデータベース) 中野版
名古屋大学図書館・岡谷文庫本(一冊、国書総目録)
●詳細は『近世初期文芸』33号(平成28年12月25日)

【13】『かさぬ草紙』

〔1〕 神宮文庫蔵本
〔2〕 名古屋大学附属図書館・皇学館文庫
●『仮名草子集成18』(平成8年9月20日)。ここでは『集成』の基準によって記載。詳細は未発表。

【14】『かなめいし』

〔1〕 大洲市立図書館・矢野文庫蔵本
〔2〕 国立国会図書館・阿波国文庫蔵本
〔3〕 高知県立図書館蔵本
●『仮名草子集成18』(平成8年9月20日)。ここでは『集成』の基準によって記載。詳細は未発表。

【15】『枯杭集』

一、西村絵入本
〔1〕 大東急記念文庫蔵本

二、求版本
〔1〕 国立国会図書館蔵本
〔2〕 東北大学附属図書館蔵・狩野文庫本
〔3〕 天理図書館蔵本
〔4〕 東京国立博物館蔵本
●『仮名草子集成18』(平成8年9月20日)。ここでは『集成』の基準によって記載し、詳細は未発表。

【16】『鎌倉物語』

一、万治二年安田十兵衛求版 大本
〔1〕東京大学総合図書館蔵本
〔2〕 国立公文書館・内閣文庫蔵本

二、 元禄十三年須原屋茂兵衛求版 大本
〔1〕国立公文書館・内閣文庫蔵本

三、 享保二十年小川求版 小本

四、 宝暦二年須原屋求版 小本
〔1〕東京大学総合図書館蔵本
●『仮名草子集成18』(平成8年9月20日)。ここでは『集成』の基準によって記載。詳細は未発表。

【17】『葛城物語』

1、葛城物語
〔1〕大阪女子大学図書館蔵本
〔3〕 大阪府立中之島図書館蔵本

二、役行者縁起 貞享五年菱屋治兵衛版
〔1〕国会図書館蔵本
●詳細は『仮名草子集成19』(平成9年3月10日)。ここでは、『集成』の基準によって記載。詳細は未発表。

【18】『堪忍弁義抄』

一、慶安四年版
〔1〕小川武彦氏蔵本
〔2〕玉川大学図書館蔵本
〔3〕筑波大学図書館蔵本
〔4〕国会図書館蔵本

二、承応二年写本
〔1〕深沢秋男蔵本(平成14年12月現在)
●詳細は『近世初期文芸』19号(平成14年12月)。

【19】『勧孝記』

〔1〕龍国谷大学大宮図書館蔵
●詳細は『仮名草子集成20』(平成9年8月30日)。ここでは、『集成』の基準によって記載。詳細は未発表。

悉皆調査

悉皆調査

  • 2019.09.02 Monday
悉皆調査

●私は、仮名草子作品のいくつかを、原本調査した。基本は〔悉皆調査〕であった。それも、同時に、いくつもの作品の調査はしなかった。せっかく京都まで来たのだから、と言って、仮名草子作品の、あれも、これも、同時に調べることはしなかった。一つの作品に限定して、何度でも、京都へ通った。効率よりも正確さを求めたのである。

●この種の調査は、時間も費用もかかる。同じ作品を何人もの研究者が、重複して調べるのは、極めて無駄である。それには、最初に調べた者が、正確なデータを定着すべきである。私の経験では、同じ本の大きさや、表紙の色でも、どうして、このように違いがあるのか、と驚くことが、少なくなかった。

研究者の蔵書

研究者の蔵書

  • 2019.09.02 Monday
研究者の蔵書

●菊池先生のエッセイに、加藤秀俊氏の発言が紹介されていた。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。

加藤秀俊が、『明治メディア考』(中公文庫)の中で、
日本ほど蔵書家のいる国はほかにないのじゃないですか。〈中略〉それだけ裾野の広い読書人口があって、それぞれ買った本を自分の家の本棚に所蔵している。〈中略〉外国の大学の先生の家へ行ってみたって、本はきわめて少ない。そのかわり、本は図書館のものを使うものだという観念になっているんですね。つまり、日本人は書物に対する所有欲が格段に高い国民なんじゃないのかな。
と言っている。
これも昔の話になるのではないか。出版社の倒産が続き、漫画は売れるものの書籍はあまり売れない。売れてもデジタル版だ。そのうち古書店の廃業が続くのではないか。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

●私は、仮名草子研究を始めた頃、書籍の利用方法を検討した。貧乏研究者が、江戸時代の和本を買い集めても、高が知れている。国や都道府県や大学が買い集めた書籍を利用するのが最適、そのように判断した。利用する私は、図書館の近くに住めばよい。

●東京では、国会図書館、都立日比谷図書館、早稲田大学図書館、ここに、1時間30分以内で行ける所に住む。

●東京の図書館の本を見終わったら、京都へ引っ越して、京都大学図書館、京都府立図書館等の本を見る。次は大阪・・・。

●住所は、東京墨田区の姉の家に固定する。

●仮名草子に限定しても、人間には、寿命があるのだから、よほどうまく考えないと目的は達成できない。そんな思いだった。

仮名草子研究 思い出す恩師

仮名草子研究 思い出す恩師

  • 2019.08.02 Friday
〈随想〉仮名草子研究
――思い出す恩師のことなど――

私が法政大学で仮名草子を卒論に選んだのは、近藤忠義先生の説経節の演習がきっかけであった。『さんせう太夫』や『しのだづま』などの本文をガリ版で印刷してテキストに使った。ほとんどが平仮名の本文に、一語一語漢字を当てるのには苦しんだが、これが大変勉強になった。

この授業の中で、なぜ仮名書きか? という疑問も持ったし、中世末期から近世初期へかけての、庶民の息吹の並々でない事も知る事が出来た。そして、この過渡期の時代の文芸に非常に興味を覚えた。これが、仮名草子を卒論に選ぶ一つの契機となった。

卒論指導は重友毅先生であった。重友先生の卒論指導は厳しい、という事で知れ渡っていたが、その厳しい先生の御指導を希望し、テーマを提出した。

私は1962年の卒業であるが、当時の日本文学科には、西郷信綱、秋山虔(非常勤)、西尾実、近藤忠義、重友毅、小田切秀雄、長澤規矩也という、錚々たる先生方がおいでになり、そのお教えを頂いた私達は幸せ者であった。今も、その学恩に感謝している。

仮名草子の中では、特に『可笑記』を選んだ。作者は浪人であるが、正義感の強い人物で、内容は批判性に富んだ作品であった。

この作品の本文は、当時、「徳川文芸類聚」と「近代日本文学大系」の中に収録されていたが、両叢書とも、なかなか古書店には出ず、たまに出ても、かなりの値段で、学生の私には、とても購入できなかった。当時は、まだコピーなど無かったので、毎日、学校の図書館や上野図書館へ通って書写した。大学ノート8冊になったが、完了した頃には、内容も、ほぼ自分のものになっていた。

先学の、水谷不例氏も暉峻康隆氏も、この作品は全400段であると記していたが、書写した両叢書や国会本の和本に収録された本文は、いくら数えてみても、280段しか無い。途方にくれて、早稲田大学の暉峻康隆先生をお尋ねして、問うてみたが、埓はあかなかった。残された道は原本を全て見る以外に方法がなかった。私の『可笑記』の諸本調査はここから始まった。

他大学図書館等の閲覧・調査には法政大学図書館長の紹介状に非常に助けられた。更に厳しい条件の時は、重友先生の名刺や紹介状を追加して頂いたが、原本調査で最も御指導頂いたのは、長澤規矩也先生であった。

長澤先生は、中国文学・書誌学を教えて下さったが、学生の頃から大東急記念文庫などに連れて行って下さった。先生は、川瀬一馬先生と共に、日本の書誌学界の権威であり、この大先生にお教え頂いた事は幸せであった。先生の御指導は非常に厳しいものであったが、一面で寛大であった。私は、図書館界で高名であった長澤先生のお名前を、しばしば使わせて頂いたが、いつも快くお許し下さった。

天理図書館は、貴重古典籍の所蔵では、有数の図書館であり、ここの調査には慎重を期した。万一にも失敗は許されないと考えたからである。幸い、島本昌一先生に連れて行って頂く事が出来た。先生と二人で夜行で奈良まで行き、午前9時、憧れの天理図書館の正面入口に立った時の感動は、今も全く薄れていない。以後、今日まで、この天理図書館には大変お世話になっているが、天理大学の金子和正先生は、長澤先生の教え子であり、原本調査に関して、全面的に御指導下さった。私の書誌学的調査の基礎は金子先生にお教え頂いたものである。

法政卒業後も、重友先生・長澤先生などの御指導のもとに、仮名草子研究を続けてきたが、学外の多くの先生の御指導も頂いた。

国学者・鹿島則文のコレクション・桜山文庫の調査を通して、則文のお孫さんの鹿島則幸氏にめぐり会えたのは、身に余る幸せであった。鹿島氏の御厚意によって、桜山文庫の御蔵書を調査させて頂いたが、これが、私の研究の根幹になっている。

ずいぶん前になるが、鹿島氏は、御所蔵の桜山本『可笑記』を、私の研究のためにと御恵与下さった。貴重な御本であるので、調査終了後は法政大学の図書館に寄贈したい旨申し出たところ、図書館の係の方は、法政には和本の管理が出来ないので、他の図書館へ寄贈してはどうか、とアドバイスされ、残念な思いをした事もあった。

後年、鹿島氏は桜山文庫を一括譲渡したいとの事で、この件を私に一任された。譲渡先として、現在、勤務している昭和女子大学を第一に考えたが、何しろ1万冊に及ぶ写本・版本であるから、その金額もかなりのものになると予想し、第2に鹿島氏の母校・国学院、第3に私の母校・法政、以下、国会図書館、国文学研究資料館などを検討し、結果的には昭和女子大学に決まったが、そのような事もあった。

その他、慶応の横山重先生、北大の野田寿雄先生、国学院の朝倉治彦先生など、多くの先生の御指導を頂きながら、仮名草子研究を進めてきたが、もう30年余になる。

卒論の頃リストアップした仮名草子作品は175点位であったが、昭和63年に作った私の『仮名草子研究文献目録』では300点余に達する。勿論、仮名草子の範囲に関しては、研究者によって見解を異にするところもあるが、作品の数は確実に増えている。

戦後、これらの諸作品の研究も、進められてきてはいるが、それでも十分とは言えない。私は、微力ではあるが、多くの恩師・先学の御学恩に感謝しながら、さらに、研究を続けてゆくつもりである。
(ふかさわ あきお・1962年卒)
(深沢秋男氏は横山重・松本隆信両氏の『室町時代物語大成』の跡を継ぎ朝倉治彦氏と共に『仮名草子集成』(東京堂出版)を毎年刊行されている。本年3月その第19巻が出版された。編集者付記)
(「日本文学誌要(法政大学)」、第56号、1997年7月)

『仮名草子集成』第61巻発行

『仮名草子集成』第61巻発行
2019.03.14 Thursday

●『仮名草子集成』第61巻が発行された。

『仮名草子集成』第六十一巻
百戦奇法 明暦四年五月板、七巻七冊、絵入
百八町記 寛文四年五月板、五巻五冊
変化はなし(無刊記、板本、一冊)
花田富二夫・飯野朋美・安原眞琴 編
2019年3月10日発行
。。。。。。。。。。。。。。

●『仮名草子集成』は、朝倉治彦先生が始められ、途中、私も協力し、その後は、若い研究者に、その完結を託した。この地味ではあるが、学問的に意義のある出版が、世代を超えて継続している姿は、実に美しい。関係者に対して、心から感謝申し上げたい。

●さて、この巻には如儡子の『百八町記』が収録された。担当者は、飯野朋美氏である。この作品の本文は、昭和5年(1930)の「日本思想闘諍史料・5」に収録されていたが、90年ぶりに、信頼し得るテキストが私たちの前に提供されたことになる。学恩に対して感謝申し上げる。

●この『百八町記』の諸本に関して、飯野朋美氏は、次の如く述べられている。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 深沢秋男氏は、「『百八町記』の諸本」(『近世初期文芸』三三、平成二十八年十二月)において、寛文四年の中野道伴奥付は「後から追加したものと思われる」とされる。しかし管見に入った諸本のうち最も早印と思われる本は、中野道伴奥付を有する広島大学中央図書館所蔵本であった。よって同本を底本とした。
 なお、諸本の詳細な解題は次巻に掲載する。ここでは底本についての簡単な解題のみを示す。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。

●私は、如儡子の著作の諸本に関しては、全て調査していたが、この『百八町記』のみ、後回しになって、いざ、調査しようと思った矢先、家庭の事情で、各図書館へ出向いて調べることが出来なくなった。不本意ながら、各図書館の御配慮で、複写をしてもらい、現物ではなく、複写物に拠って調査分析した。その結果、無刊記本と中野道伴版の関係を次の如く判断した。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。

1、無刊記本と中野道伴版

 寛文四年五月刊の、中野道伴版の刊記は、巻五の三十八丁に、
「寛文四甲辰五月吉日/中野道伴板行」
とある。この三十八丁の柱刻は、「百八 巻五 三十八終」とある。本文の最終丁の柱刻は、「百八町記巻五 丗七終」とある。刊記の丁の柱刻は、本文の柱刻と、書体も異なり、この丁は、後から追加したものと思われる。従って、無刊記本は、中野道伴版より前、寛文四年五月より前の出版と推測される。ただ、版木の欠損状態などを合わせて考えると、印刷の時期は、刊記の有無に関係なく、前後している可能性もある。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

●これに対して、飯野氏は、広島大学中央図書館所蔵の中野道伴版の方が刷りが早いと判断された。詳細は、第62巻に掲載されるという。私の判断は、現物を調査せず、複写物によったものである。やはり、諸本調査は、現物に拠らなければ、真実はわからない。私の提出した試案は、4年後に訂正されることになるのであろうか。研究は、このようにして進歩してゆく。飯野氏の次巻の詳細な解題が楽しみである。

ウィキ 遠近道印 増補修正

ウィキ 遠近道印 増補修正
2019.03.11 Monday

●今、私は、横山重先生の伝記に関する原稿を書いている。私は、昭和50年(1975)に、近世文学資料類従、古板地誌編⑨として『江戸雀』の解説を担当したが、これは、横山重先生の、直々の御指名によるものであった。天下一本ともいうべき、赤木文庫蔵の『江戸雀』の初印本を底本にした。そうして、その解説で、次の新説を提出した。

『江戸雀』の著者・近行遠通=江戸図の権威・遠近道印=藤井半知

これは、横山重先生、秋岡武次郎氏、田中鈇吉氏の説に導かれた説である。このような事実に即して、ウィキペディアの『江戸雀』の項目に、私の『江戸雀』を参考文献に追加した。また、奥付に「近行遠通」と出ているのは『江戸雀』の「初版本」ではなく「初印本」が正しいので、これも修正した。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
遠近道印(おちこちどういん、寛永5年(1628年) – 没年不詳)は、江戸時代前期の絵図師。苗字は藤井。通称は六郎兵衛。号は半知、久音。諱は長方。蹴鞠にも秀でていた。

後世[編集]
近代には道印図の先駆性が評価され、研究も行われるようになったが、『諸芸雑志』にいう藤井半知の実在もはっきりせず、北条氏長説や共同筆名説等の異説も唱えられた。昭和57年(1982年)、矢守一彦が富山藩資料等を通じて藤井半知の実在を確認して「遠近道印についての新解釈」(『日本海地域史研究』第4輯)を発表して以降、研究は格段に進展したが、出自や経歴、技術の習得元など不明な点が依然として数多い。
出版物[編集]
• 寛文五枚図 – 寛文10年12月に「新板江戸大絵図」、11年4月、11月、12年閏6月、13年2月に「新板江戸外絵図」が経師屋加兵衛より出版された。西暦では1671年から1673年に当たる。1分5間。
• 「新板江戸大絵図」 – 延宝4年3月、経師屋加兵衛刊。1分10間。
●「江戸雀」 – 延宝5年、鶴屋喜右衛門刊。初印本に近行遠通撰と記され、遠近道印作の可能性が高い。
• 「江戸方角安見図鑑」 – 延宝7年3月に乾巻、8年1月に坤巻。表紙屋市郎兵衛刊。1分5間。
• 「江戸安見総図」 – 延宝8年、表紙屋市郎兵衛刊。1分20間。
• 「江戸絵図」 – 元禄2年1月、板木屋七郎兵衛刊。元禄12年5月、「懐中江戸図」と改題。1分40間。
• 「改撰江戸大絵図」 – 元禄2年2月、板屋弥兵衛刊。1分10間。
• 「分間江戸大絵図」 – 元禄2年初夏、板木屋七郎兵衛刊。元禄12年初夏、「分間御江戸図全」に改題。1分15間。
• 「東海道分間絵図」 – 元禄3年孟春。3分1町。菱川師宣画。
• 「改正分間江戸大絵図全」 – 宝永元年夏、万屋清兵衛刊。1分15間。
参考文献[編集]
●深沢秋男解説『江戸雀』勉誠社、1975年
• 飯田龍一・俵元昭『江戸図の歴史』築地書館、1988年
• 深井甚三『図翁 遠近道印 元禄の絵地図作者』桂書房、1990年
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。